糖尿病性足部潰瘍について
糖尿病性足部潰瘍の臨床所見について。
Boyko EJ. How to use clinical signs and symptoms to estimate the probability of limb ischemia in patients with a diabeteic foot ulcer. Diabetes Metab Res Rev. 2019 Dec 16;e3241.
糖尿病性足部潰瘍患者の四肢虚血を推定する臨床徴候と症状の精度
糖尿病性末梢神経障害や血流障害により、足に潰瘍ができることがある。
そこで、臨床所見などが、その下肢血流の推測に使えるか検討。
糖尿病性足部潰瘍患者60名が対象。
それぞれの臨床所見の結果から尤度比を算出した。
尤度比は以下の表のような指標となる。
その結果、
皮膚の萎縮;陰性尤度比(LR-)0.46 少し可能性を下げる
皮膚の冷え;陽性尤度比(LR+)3.0 少し可能性を上げる
これ以外の所見で確率を変動させるものはなし。
事前確率を有病率からみると
42.6~55.5%の範囲が多いよう。
そこで、事前確率を50%とした場合、
それぞれの臨床所見による事後確率は、皮膚の冷え以外は単独では役に立たない。
事前確率が75%や25%の場合では、いくつかの所見が役に立つ。
abnormal pedal pulses;足背動脈拍動の異常
これは、陽性でも陰性でも単独では判断はできない。
今回の報告では、単独では臨床所見から足部潰瘍の可能性を変動させるものは少ないということですが、組み合わせが大切で、どう組み合わせたらいいのか?を追及する報告は少ないのが現状です。
ここから先には、自験例の足の壊死画像がでます。
見たくない人は、読まない方がいいです。
足部潰瘍が始まると、そこから保存的治療で対応するのは厳しい印象があります。
自験例ですが、糖尿病性潰瘍部分が壊死した状態で、あったが、本人の希望で手術はしたくないとのことで、鍼灸依頼がありました。
糖尿病性壊疽の初回時;左足の写真 両足とも同じような感じ
鍼灸を行っても改善は難しいと話しましたが、それでもということでやってみましたが、やはりお役に立つことはできませんでした。
鍼灸開始の3週間後;右足の写真、両足とも似たような感じ
外用剤なども併用していましたが、一度壊死が始まると、そこからの改善は鍼灸では難しいです。糖尿病の既往がある方では、末梢神経障害の有無をこまめに評価する必要があり、今回の報告では皮膚の萎縮や冷えだけ有用ということでした。
他の報告では、アバディーサイン
(https://ararepyon.hatenablog.com/entry/2019/07/30/070801)
短趾伸筋の萎縮(https://ararepyon.hatenablog.com/entry/2019/06/17/060000)も過去のブログ内で扱っています。こうしたものも評価に使えるかと思います。
自験例の症例は、これはもう手術待てないということで、足の切断になりました。
潰瘍が始まる前に対応しないと厳しいと思います。
潰瘍が始まるか?を見抜くかは、非常に大切です。