美顔とSMAS
本日は、美顔に関わるSMASについて。
顔の表情筋は、骨格筋と大きく3つの違いがあります。
1.皮筋である;骨格筋は骨から骨に起始と停止があるが、皮筋は骨と皮膚もしくは皮膚と皮膚につく。
2.単一の神経支配をうける;骨格筋は頚椎や腰椎からの複数の末梢神経支配だが、表情筋は顔面神経支配
3.個々の筋ごとに筋膜に覆われてはいない;骨格筋は筋肉ごとに筋膜に覆われている(筋外膜)が、表情筋は個別に覆われず、SMASにより覆われている。
細かい違いもいくつかありますが、上記3つが特に美容鍼灸との関係もあると思います。
今回は、上記の3の筋膜に関わるSMAS(スマス)との関係についての報告です。
SMASは、Superficial muscloaponeurotic systemの略です。
SMASは、顔の皮下組織と表情筋の間にある薄い膜で、頭部から広頚筋あたりまでを覆っています。
ついでに書くと、SMASや表情筋をつなぐ靭帯をリガメントと呼び、これも美顔には重要となります。
Itsuko Okuda, et al. Basic analysis of facial ageing: The relationship between the superficial musculoaponeurotic system and age. Experimental Dermatology. 2019;28s1:38-42.
奥田逸子.顔面加齢の評価のための画像解析手法の開発:主観的感覚評価から客観的定量的評価へ.コスメトロジー研究報告.2018;26:130-4.
近年、画像解析の発展により、Multidetector-row CT(MDCT)や3.0-T Magnetic resonance imaging(MRI)などを用いて、容貌と解剖学的関係を抽出し、抗加齢・美容医学の客観的定量的評価が可能となるかを検証。
対象は、20歳以上の成人14例(男性6名・女性8名、平均年齢41.9±7.1歳)
方法は、仰臥位で顔面撮影後、たるみがでる体勢で再度撮影し、比較
評価1:両者の体勢でのたるみの出現度を4段階で評価(見た目)。
評価2:仰臥位時の頬の高さを基準点として、たるみ姿勢の頬の高さの移動距離を測定した。また、その厚みも計測した。
その結果、
2姿勢による比較では、たるみが顕著に増加した11例、軽度増加3例、変化なし0例、減少0例だった。
頬の移動距離は、平均24.3±4.79mmで、内側に平均13.3±1.37mm・尾側20.1±5.55mmと移動した。この移動距離と年齢に相関があった(r=0.69)。
また、頬の厚みの変化は、
仰臥位時15.4±2.27mm⇒たるみ姿勢19.9±3.22mmと厚みが有意に増した。
厚みと年齢にも相関があった(r=0.72)。
こうしたたるみは、なぜ起こるのか?について、皮膚・表情筋・軟部組織・脂肪組織などのもあるが、筋膜(SMAS)もある。
このSMASの支持力低下との関連をMDCTを用いて検証した。
対象は、21-57歳(平均38.7±8.1歳)の57名を2グループに分けた。
グループYは平均年齢以下の30例
グループOは平均年齢以上の27例
方法は、姿勢の変化による顔の形態変化を撮影し、SMAS弛緩指数を算出した。
その結果、
グループOのSMAS弛緩指数:105.4±2.38
グループYのSMAS弛緩指数:104.1±1.45
と有意差があった。
このSMAS弛緩指数と年齢には正の相関が認められた(r=0.72)。
若年になるほどSMAS弛緩指数は小さく、年齢の増加によりSMAS弛緩指数も増加する。
つまり、年齢の増加により、SMASの支持力が低下し、たるみなどの顔の老化につながると考えられる。
https://www.sakai-keisei.gr.jp/ope/facelift/kaibou.htmlより引用掲載
SMASは、1976年にMitzとPeyronieによって最初に報告された(Plast Reconstr Surg.1976,58,80.)。頬のたるみの要因とされた。
このSMASは姿勢変化により支持力低下につながること、年齢が高くなると支持力低下しやすいことなどが示唆されます。
なぜ、姿勢などが顔のたるみやしわなどとつながるのかを考えてみると、SMASは頭部の前頭筋⇒帽状筋膜⇒後頭筋とつながり、最終的に足裏とつながっています。
https://president.jp/articles/-/29681より
アナトミートレインでいう浅後線(superficial Back Line;SBL)とSMASは連結します。
そのため、O脚や猫背などの姿勢がSMASの支持力低下につながるのだと考えられます。
ですので、美容鍼灸を顔だけで行う、フェイシャルエステを行う、でも元に戻るのは、こうした連結部分が変わっていないためと考えると、全身的に施術を行った方がいいと思われます。
現在の美容鍼灸に関する報告では、顔面血流や肌水分量などの評価が行われていますが、今回取り上げた画像解析が可能であれば、もっと定量的で、全身の状態からの評価が出来るようになるかもしれません。