坐骨神経痛に対する陰部神経鍼通電療法
腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、側弯症などで生じる坐骨神経痛の鍼施術の方法について。
先日、幼少期からの側弯症で、最近50代になってからの坐骨神経痛?が発生した方が来院されました。側弯症に伴う坐骨神経痛は初めて経験しました。
挟脊穴とL5デルマトームの鍼通電療法を行いましたが、変化なし。
次にどうするか?と考えていたら、今回の報告を思い出し、実行すると軽減傾向にあるとのことでした。
刺激量などを考えると第1選択の方法ではないかもしれませんが、有用な感じがします。
Inoue M, et al. Pudendal nerve electroacupuncture for lumbar spinal canal stenosis - a case series.Acupunct Med.2008 Sep;26(3):140-4.
井上基浩、他.腰部脊柱管狭窄症による間欠跛行に対する陰部神経鍼通電刺激の試み.全日鍼会誌.2000;50(2):175-183.
下肢のしびれに対して、鍼の施術部位の選択にはいくつかの考え方がある。
その1つに傍脊柱部の筋刺激がある。
これは、しびれのある範囲から、その支配神経のレベルを推測し、筋刺激を行う。
しかし、この方法では効果が得られにくい症例もある。
そんなときに、陰部神経鍼通電療法が有用。
陰部神経への刺激は、
上後腸骨棘と坐骨結節内側下端を結ぶ線分上で、上後腸骨棘から50-60%の部位。
刺入深度は5-6センチで陰部への刺激感を指標
通電刺激は、2Hz、10分間行った。
陰部神経の電気刺激を行った動物研究では、
陰部神経刺激で、坐骨神経血流量が増加する。
その反応はアトロピンで消失した例では副交感神経反応、消失せず持続した図7では、軸索反射の関与が示唆される。
また血圧や心拍数には変化はなし。
この方法により、挟脊穴では坐骨神経痛や間欠性跛行に変化が乏しかった症例に行うと、
痛みや歩行距離が改善傾向を示した。
考察の部分では、
陰部神経刺激は、仙結節靱帯を鍼が貫通する際に痛みが出現し、陰部への刺激感が不快感となることがある。
なので、施術の第1選択肢とするのは避けた方がいいと考えられる。
まずは解剖を頭に入れて、何回かの練習は必要ですが、第2選択の方法として知っておくといいのかもしれません。
私は経験はありませんが、不妊治療の方法としても陰部神経刺激は有用なようです。もしかしたら、そんな依頼もあるかもしれませんので、入念な準備が大切です。