都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

Vesperの呪い

本日は、知らないと分からない「Vesperの呪い」について。

 

 

LaBan MM, et al. Restless legs syndrome associated with diminished cardiopulmonary compliance and limber spinal stenosis: a motor concomitant of "Vesper's curse". Arch Phys Med Rehabil.1990 May;71(6):384-8.

 

LaBan MM, et al. Paravertebral venous plexus distention (Batson's): an inciting etiologic agent in lumbar radiculopathy as observed by venous angiography. Am J Phys Med Rehabil.2001 Feb;80(2):129-33.

 

LaBan MM, et al. The clinical value of B-type natriuretic peptide (BNP) in prediciting nocturnal low back pain in patients with concurrent lumbar spinal stenosis and cardiopulmonary dysfunction (Vesper's curse): a clinical case series. Am J Phys Med Rehabil. 2008 Oct;87(10:798-802.

 

Rodrigues RN, et al. Restless legs syndrome associated with cardiac failure and aggravated after valvular replacement: Vesper's curse? Arg Neuropsiquiatr. 2008 Sep;66(3A):539-41.

 

Vesperの呪いは、脊柱管狭窄症+心不全で就寝時の下肢の痛みを呈する状態を指します。

以前はレストレスレッグス症候群(むずむず足症候群)と間違われるケースもあったようですが、おそらく原因がよく分からず、呪いと表現されたのではないでしょうか?

 

腰部脊柱管狭窄症は神経性間欠跛行が発生しますが、これは立位の状態で起こりますが、実は似た姿勢となる仰臥位でも起こります。この場合、跛行は確認できませんが、痛みが起こりやすい状態になります。

そこに心不全(特に右心不全)が加わると、仰臥位での坐骨神経痛がさらに増悪するというのがVesperの呪いです。

 

なぜ、心不全があると脊柱管狭窄症の症状が増悪するのか?

心不全の患者は「起坐呼吸」が起こることがあるというのは本ブログ内「前屈みになると息が苦しい」でも取り上げています。

起坐呼吸は、「臥位で苦しく、起きると楽」という呼吸状態を表します。どうやら、臥位姿勢になると心不全患者では「バトソン静脈叢」と呼ばれる椎体周囲にある静脈がうっ血するようです。

バトソン静脈叢↓ Aが動脈で、Bは静脈の分布

「バトソン静脈叢」の画像検索結果

(https://www.ajronline.org/doi/pdf/10.2214/ajr.158.6.1590123より)

 

バトソン静脈叢がうっ血すると、上大静脈や下大静脈への還流に問題が生じるようです。

その結果、腰部脊柱管狭窄症の状態が増悪し、痛みも増悪するようです。

 

脊柱管狭窄症患者で、Vesperの呪い(夜間疼痛で睡眠障害)の有無で脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値を比べると、

あり群:136.9±62.1 pg/ml

なし群:67.9±46.6 pg/ml

と有意な差があったとしています。

BNP値は、心臓ホルモンで、特に心房の圧と関連があり、心房圧が高くなるとBNP値も高くなります。心房圧は、心不全・高血圧・腎機能低下でも高くなるので、これらでBNP値も高くなります。

しかし、BNP値の標準偏差をみると、両者の差は、そこまではっきりと区別できるほどではないような気がしますが、よくわかりません。

 

鍼灸師は、腰部脊柱管狭窄症の患者さんを診る際には、間欠性跛行を確認しますが、立位だけでなく、臥位でも疼痛が悪化しないか?するならば、心疾患は既往歴でないか?

最近の血液検査でBNP値は高くなっていないか?などを確認しておけばいいと思います。