都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

下痢型の過敏性腸症候群へ長期間の灸効果

2022 Feb 23;15:17562848221075131.
 doi: 10.1177/17562848221075131. eCollection 2022.
Long-term effect of moxibustion on irritable bowel syndrome with diarrhea: a randomized clinical trial.
下痢を伴う過敏性腸症候群(IBS-D)に対する長期的な灸の無作為化比較試験
 
過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛・腹部膨満・排便異常(下痢型・便秘型・交代型)といった症状が出現。
このうち下痢型のIBS有病率は、世界で10-25%とされる。
 
研究デザイン;多施設RCT、ダブルブラインド
介入;灸;ST25・ST36:52名
比較;偽灸:52名
施術はそれぞれ1回30分、1日おきに週3回、6週間実施。
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評価;IBS症状の軽減率~施術中とフォロー期間に毎週
 
結果;
対象者の背景

灸群と偽群のベースライン人口統計と臨床的特徴。a

  シャム p
性別、n(%)
 男 23(46.9) 28(53.9) 0.327
 女性 29(55.8) 24(46.1)  
年齢、y、平均(SD) 47.6±11.9 45.2±14.7 0.357
高さ、cm、平均(SD) 166.2±8.0 167.3±9.2 0.534
体重、kg、平均(SD) 60.7±12.9 63.0±12.1 0.357
教育、年、平均(SD) 14.2±2.6 15.6±15.4 0.525 b
IBSの期間、年、平均(SD) 6.8±7.9 8.1±7.1 0.353
Ptの期待値、n(%)c
 わずか 7(13.5) 5(9.6) 0.673 d
 適度 12(23.1) 13(25.0)  
 過激 33(63.4) 34(65.4)  
IBS-SSS、平均(SD)
 総得点 253.6±72.2 252.9±77.5 0.958
 腹痛、重症度 37.3±30.4 37.7±32.4 0.950
 腹痛の持続時間、日数 35.4±28.5 38.3±32.3 0.630
 腹部膨満の重症度 37.3±30.4 37.7±32.4 0.950
 排便習慣への満足 69.6±22.8 68.1±26.6 0.752
 一般生活における干渉 67.3±23.4 65.2±23.0 0.643
IBS-SSS、n(%)
 軽度 6(11.5) 10(19.2) 0.352d
 適度 33(63.5) 31(59.6)  
 重度 13(25) 11(21.2)  
BSS、平均(SD)
 総得点 5.92±0.86 6.10±0.80 0.290
 下痢の頻度/週 3.25±1.20 3.61±1.36 0.159
 腸の緊急性スコア 88.5±9.4 88.7±8.9 0.915
IBS-QOL、平均(SD)
 総得点 58.5±18.9 60.1±17.9 0.659
 不快気分 53.6±23.1 55.3±22.8 0.670
 活動への干渉 51.0±22.4 50.6±24.1 0.940
 身体イメージ 73.1±20.0 76.2±18.7 0.412
 健康上の心配 56.1±21.7 55.9±22.5 0.971
 食物回避 40.9±30.0 46.2±27.3 0.350
 社会的反応 66.6±20.6 68.6±24.7 0.648
 性行為 71.6±28.9 73.6±28.7 0.734
 関係 70.0±23.8 71.0±22.6 0.833
HADS、平均(SD)
 不安 7.6±4.1 8.4±4.3 0.346
 うつ 6.1±4.3 6.1±4.4 0.964
 
IBS症状の軽減率
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偽灸に比べて、灸はIBS症状を軽減させ、その効果は少なくとも24週は持続する。
灸グループは、およそ77%が軽減反応を示した。
1回の施術の平均皮膚温度は、灸43℃、偽灸37℃で、
TRPV1の刺激が関与している可能性を考察。
 
この報告では、棒灸を使用。
30分自分でするのは大変なので、工夫は必要となりますが、
セルフケアとしても使える。
 
日本ではIBS患者は10-20%の有病率とされています。
そのうち下痢型はどのくらいいるか?は分かりませんが、有効なセルフケアないし治療法になる可能性が期待できます。