中枢性めまいの2症例
KMJ THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL. 2017; 67: 147-152.
1症例のみ記載する
患者:46歳、男性.
主訴:回転性めまいと左難聴
既往歴:特記事項なし
現病歴:ランニング中に急に回転性めまいが発生し、総合病院に緊急入院。頭部CTは異常なし。左難聴を自覚しており、内耳性が疑われた。翌日には、めまいと難聴が改善したため退院し、耳鼻咽喉科を紹介された。
耳鼻咽喉科受診時、平衡障害を訴えるも歩行は可能。聴力検査で左右差はなし。正面注視時・非注視下でも弱い左向き眼振を認めたが、頭位眼振や頭位変換眼振はなし。明らかな神経学的所見もなし。内耳性と中枢性が判断付かず、次回診察時のMRI予約。
経過:再度、高度難聴を伴う回転性めまいが発生。複視、左口角の違和感、舌のしびれを自覚。意識は清明で、会話は出来る。歩行は困難で車いすで移動。
今回の症例は、現病歴で記載した状態で、鍼灸院に来院する可能性はある。
めまいは、回転性や浮動性めまいのほか、前失神・平衡障害などもめまいとして訴えて来られる。しかし、難しいのは回転性だから末梢性めまい、浮動性だから中枢性めまいと簡単に区分できず、回転性や浮動性めまいの性質は、末梢性か中枢性かの判断に役に立たないとされている。
鍼灸師は、未診断のめまいに関しては良性発作性頭位めまい症(BPPV)のみ施術適応とすることが望ましいと考える。
今回の症例は、難聴を自覚しているので、その時点で病院を紹介すべきだろう。
しかし、耳鼻咽喉科を紹介するのか?それとも神経内科を紹介するか?を考えないといけないので、BPPVらしくないと判断した場合、内耳症状がない場合はHead impulse testなどのHINTSや継足歩行の有無を行う。これが陰性であれば前庭神経炎として紹介先を検討する。陽性ならば中枢性めまいとして行動する(しかし、Head impulse testは、今回の症例のように特定部位の小脳梗塞では陰性となることがあるので注意)。
内耳症状がある場合、メニエール病や突発性難聴などが多いが、継足歩行がまずは判断してもいいと思う。歩ければ耳鼻科、歩けなければ神経内科などと考える。
この他にも観察するポイントはあるが(前失神や平衡障害なども)、鍼灸師は原則としてBPPVのみ行動するを徹底すれば患者さんにも、鍼灸師にも安心な施術を提供できると思われる。