パンコースト腫瘍の症例報告
パンコースト腫瘍は、日常臨床で遭遇する頻度は高くはないだろう。
しかし、だからこそ忘れてはいけない疾患の1つともいえる。
パンコースト腫瘍は、肩こりや頚椎症として診断されていても、実際は違ったということが稀にある。
今回の報告は、初診で頚椎症と診断されたパンコースト腫瘍の2症例報告。
Pancoast腫瘍の2例.
整形外科と災害外科. 2018;67(3):628-631.
1症例のみ記載する
症例1:65歳、女性。
半年前から左頚部痛・左肩甲骨部~上腕橈側部痛、左前胸部痛、左前腕尺側から第2・3指のしびれ→頚椎症と診断
既往歴:特記事項なし
喫煙歴:1日20本、40年
身体所見:Jackson test、Spurling test→陰性、腱反射正常、病的反射なし、筋力テスト正常
MRI:軽度の脊髄圧迫・狭窄なし、C7~T2で高輝度変化有り
造影CT:左肺尖部に腫瘍性病変あり
頚椎単純X線(正面):左肺尖部に異常陰影あり
最終診断:ステージ3Aのパンコースト腫瘍
パンコースト腫瘍は、全肺がんの2~5%を占める。
ある報告では、7132人の頚部痛や肩・上肢痛患者で0.14%(10人)がパンコースト腫瘍であったとしている。
18例の誤診症例が報告されており、初診時症状は、グラフ参照
本文からグラフ化して掲載
個人的に注目すべきは、上肢症状(尺側・橈側)だろう。両者を合わせると100%となる。
頚部痛や肩痛を訴え、上肢症状があるから、頚椎症と決めつけることなく、
身体所見(理学所見)の有無を確認することを忘れてはいけない。
ホルネル徴候は、陰性でも楽観視できないことにも注意。
ホルネル徴候は、肩や健康部痛出現から9~15ヶ月後に認められ始めるとされている。
初診時には陰性となる可能性は十分にある。
まずは、パンコースト腫瘍を認識し、鑑別の中に必ず入れること。
そして、身体所見と症状が解離している場合は、可能性が低くとも病院受診を促す・紹介をするを徹底すべきと考える。