認知機能の低下を起こす見逃したくない疾患
本日は、認知機能の低下で考えたい疾患について。
認知機能が低下すると認知症と考えたくなりますが、そうではない場合も想定しなければいけません。
鍼灸院に、「最近、物忘れが・・・」や「家族がなにかおかしいけど、病院にいくべきか?」といった相談がくることは、たまにあります。
鍼灸師には診断権はないので、最終的な判断は医師に委ねることですが、鍼灸師として出来る限り相談にのります。
そこで、忘れずに考えたい疾患は、
1.せん妄
2.甲状腺機能低下症
3.正常圧水頭症
4.慢性硬膜下血腫
5.うつ病
を疑わせるものはないか?
はチェックしておきたいです。
上記以外も、場合によっては考えることもありますが、基本的には上記をまずは考えます。
理由は、いずれも死につながる可能性が高い疾患だからです。
ときどき、うつ病はなんで考える?と聞かれますが、うつ病は自殺リスクがあるので、見逃したくありません。
それぞれ、どこに注目するかを簡単にまとめてみます。
せん妄~急性発症か否か?、症状は日内変動があるので、家族などに朝と夕で様子が変わらないかを聞く。また見当識障害(時間・場所・人)があると疑う。疑いがある場合は、服用している薬剤の種類といつから飲み始めたのか?もしくは最近中断した薬はないか?を確認して、医師へ紹介。
甲状腺機能低下症~どの年代でも起こりえます。橋本病が最も多い。
最近になり、足のむくみ・寒がり・動作緩慢・乾燥肌・発汗減少・便秘・月経過多・筋肉痛・嗄声などを訴えることは多くなったか?
こうした症状があれば、甲状腺の腫脹(甲状腺機能亢進症でも腫大はありますが、低下症ではゴツゴツした感じがあることが多い)、アキレス腱反射の遅延や眉毛の外側が薄くなっていないか?
を確認。
正常圧水頭症~60歳以降に多く、認知機能低下、歩行障害、尿失禁が主症状。
歩行がパーキンソン病の歩行障害と類似(小刻み歩行・外股・突進現象・第1歩がでにくいなど)するため、似た歩き方では疑う。
慢性硬膜下血腫~転倒歴は重要ですが、覚えていないことが多い。アルコール多飲者では要注意。数週間~数か月の間で徐々に症状が強くなる傾向。頭痛を訴えることもある。疑ったら、頭部の聴性打診を行う。
うつ病~うつ病の重症度と身体症状は相関するため、程度が軽いと身体症状も軽いことが想定されます。しかし、思考抑制(考えがまとまらない、思考が停止しやすい)の状態から、質問をしてもはっきりと答えられない・分からないといった回答が多いと疑うことが大切。体重減少や不眠、疲れやすいなどの訴えがないかを確認する。
これらの疾患が疑われた場合、速やかに専門医へ紹介することが望ましいです。
見逃さない最大のポイントは、家族からの「何かがおかしい」だと思いますが、鍼灸師はそこからどこに紹介するのか?まで考えられたらいいですね。
そして、これらの疑いがなかった場合、認知症の可能性を考えます。
その際に、認知症の長谷川式などを行ってもいいのですが、場合によっては、患者さんを傷つけることにもなりかねませんので、まずは、
振り返りテストや山口きつね・はと試験などから始めるのもおすすめです。
これらの診断精度などについては、過去のブログ内に書いてますので、併せてご参照ください。
認知症の身体所見↓
https://ararepyon.hatenablog.com/entry/2019/05/28/183252