都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

認知症の身体所見

鍼灸院にも、様々な主訴や随伴症状を持った患者さんはやって来る。

そのいくつかには、精神的な要素が症状の寛解を阻害したり、増悪させたりすることがある。高齢者の場合、いくつかの認知症が混在していることも多い(アルツハイマー型と血管性認知症など)。また、薬剤性(抗ヒスタミン剤SSRI、抗パーキンソン病薬(抗コリン薬)、過活動膀胱治療薬、H2遮断薬など)によるものもあるため、まずは認知症の有無を鍼灸師は判断し、神経内科や精神科を紹介することになるだろう。

 

そこで、うつ症状がないか?認知症がないか?といったチェックが必要なのだが、

認知症で有名な長谷川スケールなどでは、質問項目が患者さんの自尊心を傷つける可能性があり、ためらわれる場合がある。

そのため、まずは身体所見で疑いがないかをチェックするようにしている

その1つに、患者さんへなんでもいいので質問をし、患者さんが付き添いの人(後方に立っている)の方を頻回に向くかを観察する「振り返りテスト(Head Turning Test)」がある。これは認知機能障害、特にアルツハイマー認知症に対しての感度60(49-70)%、特異度98(95-100)%、LR+25(8.0-0.77)、LR-0.41(0.13-1.3)とする報告がある(J Neurol Neurosurg Psychiatry.2012 Aug;83(3):852-3.)。この他に日本での報告では、アルツハイマー型とその他の認知症(軽度認知障害:MCI、レビー小体型認知症:DLB、進行性核上性麻痺:PSP、血管性認知症:VaD)と比較して、感度42%、特異度83%、LR+2.5、LR-0.7とされている(Dement Geriatr Cogn Dis Extra.2011 Jan;1(1): 310-7.)。また、質問を行い振り返れば(HTT陽性)アルツハイマー型、困った様子だとDLB、怒るとPick病という意見もある。

 

http://www.karger.com/WebMaterial/ShowPic/216141

 

この他にも、「山口キツネ・ハト模倣テスト」がある。これは、鍼灸師が影絵のときに行うようなキツネやハトを手本で見せて、同じように真似をしてもらうものだ。これは、患者さんを傷つけることなく行える。これが10秒以内に真似できるかを見るのだが、その診断特性は、認知症全体に対して感度80.7%、特異度94.3%、LR+14.2、LR-0.20とされている(Dement Geriatr Cogn Disord.2010;29(3):254-8.)。

キツネのみの診断特性は、感度11.4%、特異度100%、LR+∞、LR-0.89、ハトのみの診断特性はLR+14.2、LR-0.20とされているので、ハトを先に行い、真似できたらキツネも行うといいかもしれない。なお、細かい注意点や観察ポイントもあるので、詳しく知りたい人は原著かhttp://yamaguchi-lab.net/?p=106を参照してください。

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これらの身体所見で、事後確率が高い場合や疑いがある場合には、丁寧に説明を行い、長谷川スケールなどを行うと患者さんの自尊心を傷つけることなく、検査が行えると思われる。