都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

急性中耳炎について

子供の頃に、中耳炎になった経験は多くの人があるのではないだろうか?

私も中耳炎に小学生と中学生の頃になり、真珠腫性であり、外科的手術を行った経験がある。

耳垂れ(浸出液)が出て、耳痛は記憶にないが、耳鳴りや特定の音域の音は聞き取りずらい。

小学生の子供がもし、そうなっていたら気付けるようにこのブログでまとめておく(子供はいないけど)。

 

急性中耳炎(Acute Otitis Media:AOM)は、中耳の炎症によって引き起こされる徴候及び症状の急性発症とともに、中耳の浸出液の存在を特徴とする一般的な小児期の疾患の1つである(Am Fam Physician.2017 Jan 15;95(2):109-110.)。

AOMの症状には耳痛があり、その他にも耳を引っ張る・こする、発熱、食欲不振などの非特異的症状をしめし、鼓膜の発赤、黄色、腫脹、穿孔などを認める(JAMA2003 Sep 24;290(12):1633-40.)。

性感染症を伴わない場合もあるが、その際は滲出性中耳炎のことが多い。

急性から3ヵ月以上続くと、慢性中耳炎となる。

急性中耳炎の発生率は、54.6%-87%とされ、慢性中耳炎は45.1%、日本(福岡)における真珠腫性中耳炎の発生数は6.8-10.0/10万人とされる(Am Fam Physician.2017 Jan 15;95(2):109-110. J Laryngol Otol.2015 Aug;129(8):779-83. J Laryngol Otol.2015 Mar;129 Suppl 2: S6-11.)。

原因菌は、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ球菌、M.Catarrhalisなどで、リスクファクターとして、おしゃぶりの使用、AOMの家族歴があり、3ヵ月以上の母乳育児は予防効果があるとされている(Am Fam Physician.2017 Jan 15;95(2):109-110.)。

各国の中耳炎ガイドラインの違いを調査した報告では、原因菌に対する抗生物質の使用に違いがあるとしている。先進国では推奨している(2-5歳では5-7日の使用)が、発展途上国では記載がないとしている。また診断のためのティンパノメトリーに関して、先進国では日本のみ推奨しているが、他の先進国ではイタリアのみ限定的な使用を推奨しているのみであるとしている(Arch Dis Child.2017 May;102(5):450-457.)。

抗生物質の使用の是非については、今でも議論されているが、使用しなかった場合のリスクとして中耳炎症状の遷延化、乳腺炎(1-2/1万人)、髄膜炎、まれに頭蓋内合併症が報告されている。

 

病歴によるAOMに対する診断特性(JAMA2003 Sep 24;290(12):1633-40.)

耳痛(LR+3.0-7.3)と耳をこする(LR+3.3)があると可能性を上げる。

上気道感染症がない(LR-0.3)、鼻水がない(LR-0.5-0.6)、耳痛がない(LR-0.4-0.6)場合、可能性が少し下がる程度

これらの単独でAOMを疑うことは出来ないが、これらの症状が認められた場合は、耳鼻科の受診を勧める方がよいだろう。

慢性中耳炎となってしまったら、成人期以降も影響がでることがあるとされている(Ear Hear.2019 Apr 16.doi:10.1097/AUD.0000000000000729.)。ノルウェーで40年にわたり慢性化膿性中耳炎になった子供を追跡調査した結果、成人期での病気との関連性として、慢性副鼻腔炎[OR=3.13(1.15-8.52)]、心血管疾患[OR=1.38(1.01-1.88)]、難聴(OR=5.58(3.78-8.22))、耳鳴り[OR=2.62(1.07-6.41)]が高くなるとされ、喘息や炎症性腸疾患、関節炎、前庭疾患などはリスク増加は認めなかったとされている。

JAMA2003 Sep 24;290(12):1633-40.より改変して掲載

 

小児や乳児の場合、症状を詳細に説明することは困難であるため、わずかでも徴候があるならば、専門医へ紹介するのが望ましいと考える。

昨今の社会事情として、両親が共働きであることが多く、子供は忙しい両親に迷惑をかけたくないと思い、我慢をすることがある。しかし、我慢させてもいいことはなにもなく、場合によっては、私のように難聴や耳鳴りが一生続くことになる(片耳だけなので日常生活に不便はまったくないが)。