脱水時の水分補給は筋痙攣を予防するのか?
今回は、脱水における筋肉の痙攣の予防に関する報告。
Water intake after dehydration makes muscles more susceptible to cramp but electrocytes reverse that effect.
BMJ Open Sport Exerc Med. 2019 Mar 5;5(1):e000478.より
脱水後の水分摂取は筋肉を痙攣させやすくするが、電解質では痙攣を緩和する
脱水時の筋肉の痙攣への影響について、運動によって誘発された場合の水分と経口補水液による比較は報告がない。
そこで、脱水後の保水が筋肉の痙攣に及ぼす影響を検討した。
対象:10人の男性
研究プロトコール
デザイン~条件反転法、休止期間1週間
下り坂走行(DHR)により、体重が2%減るまで行った。
評価~血液採取(Hct,Hb,血清浸透圧、血清ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩化物濃度)による測定をDHRの直前・直後・80分後に行い、筋痙攣感受性の指標としてTF(Threshold frequency)を水分摂取の直前・直後・30分後・60分後に測定。
その結果、
走行時間は、
3人は40分、
2人は50分、
5人は60分、
走った。走行距離5.4-8.4㎞、平均速度7.9±1.2㎞/hであった。
血液採取によるDHR直前の数値に有意差はなかったが、直後ではHct、Hb、血清浸透圧は有意な増加を示したが、80分後にはもとに戻った。
TFの変化
水群(25.1±1.5Hz)とOS-1群(25.2±1.3Hz)の直前値に有意差はなかった。
直後値では、水群(24.6±2.1)とOS-1群(24.7±1.4)も有意差なし。
水群の摂取後30分では、直前値から4.3Hz減少したが、OS-1群は3.7Hz増加した。この状態は、80分後も持続された。
これより、運動による脱水後の水分摂取は、筋肉の痙攣を引き起こしやすくなり、OS-1は筋肉の痙攣の可能性を下げることが示唆された。
今回の報告は、経口補水液による筋肉の痙攣を抑制することが示唆された報告だ。これだけならば、みんな知っていることだが、今回の報告では、普通の水分では、反対に痙攣を起こしやすくする可能性が示唆されている。
これまで、患者さんには経口補水液を、糖尿病や高血圧などが無ければ適度なスポーツドリンク、これらがなければ水をと言っていたが、間違っていたかもしれない。
ちなみに、コカ・コーラのサイト内のスポーツドリンク(アクエリアス🄬)の砂糖含有量は4.7ℊ/100mlとある。
一方、大塚製薬のOS-1🄬は、2.5g(1.8%)とされているようだ。
患者さんの基礎疾患によっては、スポーツドリンクは勧めにくい場合がある。
しかし、経口補水液は買い続けるのはコストがかかる(約200円/500ml)ので、患者さんには作り方を教えることもある。
https://www.kakuredassui.jp/stop/knowledge/care/care06
しかし、この報告は、RCTではないし、症例数も少ないために、これだけでは決められない。
また、利益相反はないとしているが、OS-1の提供を受けているとは書いている。利益相反の基準は分からないけど、これは該当しないのか?
一応、そこらへんも含めての結果としてみたほうがいいかもしれない。
今回の報告では、TFの図をみても、確かに逆転現象が起きているようにみえるが、標準偏差の値もみると、症例数が増えたら微妙になる可能性がある。それでも、脱水にOS-1のような経口補水液が有用なのは変わらないだろう。
面白い結果だった。