こめかみの頭痛
Nerve entrapment headaches at the temple: Zygomaticotemporal and/or auriculotemporal nerve?
Pain Physician.2019 Jan;22(1):E15-36.より
こめかみの神経絞扼性頭痛:耳介側頭神経か頬骨側頭神経
この報告は、Narrative reviewであるため、それを踏まえて読んでいった。
こめかみの頭痛として考えられるものとして、耳介側頭神経(ATN)または頬骨側頭神経(ZTN)の絞扼などによる痛みが鑑別に挙げられる。
ここでは両者の違いについて解説する。
大まかな解剖学的な違いは、
耳介側頭神経は三叉神経第3枝(下顎神経)に含まれ、外耳道の下の下顎骨の後部境界で分離し、耳下腺や中部髄膜動脈?に巻き付きながら側頭部へ上行し、側頭筋膜内へ移行する。
頬骨側頭神経は三叉神経第2枝(上顎神経)から分岐し、眼窩下裂を通り、頬骨顔面神経と頬骨側頭神経に分かれる。頬骨側頭神経は、頬骨弓の2cm上で、側頭筋膜を通り皮膚に終わる。
そのため、痛みの部位が近いけど異なるため、両者の鑑別には、正確な部位の聴取が必要になる。
https://ronaldead.com/blog/migraines-or-neuralgia-theres-a-differenceより掲載
病歴と身体所見
ZTNの病歴
こめかみの片頭痛、開頭術、顔の整形手術、頬骨骨折または骨切術、眼窩骨折、先天性眼窩低形成術
ZTNの症状
眼やこめかみ周辺の疼痛
ZTNの身体所見
前頭側頭筋や咬筋の圧痛、歯ぎしりによる歯の摩耗
ATNの病歴
耳介前の片頭痛、歯痛、顎関節の外傷、耳下腺手術や重度の炎症(おたふくかぜなど)、鉗子による分娩の既往がある乳児、神経線維腫瘍、顎の膿瘍、三叉神経痛
ATNの症状
髪の生え際やその後方の側頭動脈周辺や歯のズキズキした痛み、顎の関節痛、顔の表情を動かすことによる痛み、耳介前部の痛み、聴覚の異常感覚、
ATNの身体所見
側頭筋の圧痛、片側性の唾液分泌異常、外耳道の感覚障害(耳鳴りやめまいなど)、舌(外側)・顎・下唇のしびれ
鑑別疾患
頚椎症性頭痛、片側性頭痛、筋性頭痛、顎関節症、中耳炎、歯痛、顔面痛、三叉神経痛、側頭動脈炎
が挙げられる。
診断テスト
ZTN~眼の外側約2cm、上方1cmの圧痛、同部位の注射後の痛みの寛解(この部位をZTNが通過する)
ATN~耳珠と目の間を結んだ線上を底辺とした三角形の頂点の圧痛、同部位への注射後の疼痛寛解
基本的には神経痛として考えれば、見逃すリスクは減るだろう。
そのためには、痛みの部位や性状などを細かく聞くことが大切になりそうだ。
また、50歳以上の男性の場合では、側頭動脈炎との鑑別が大切になりそうだ。
間欠性顎跛行と似た症状や側頭動脈のの圧痛と間違えそうだが、顎跛行では「顎を動かしてすぐに痛いか?それともしばらくしたら痛いか?」で判断できそうな感じだ。
もしかしたら、今までに見逃していたかもなーと思いながら、読んだ報告だった。