都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

不妊症と鍼灸治療

Effects and mechanism of action of transcutaneous electrical acupuncture point stimulation in patients with abnormal semen parameters.

Acupunct Med.2019 Apr 3: acumed2017011365. Doi:10.1136/acumed-2017-011365.より

異常精液パラメーターを有する患者への鍼通電刺激の効果と機序

 

対象:造精子機能障害(無精子症など)を有する患者121名を4群間に無作為に分けた。

グループ1~鍼刺激+2Hzの通電刺激(n=31)

グループ2~鍼刺激+100Hzの通電刺激(n=31)

グループ3~Sham刺激(n=29)

グループ4~生活習慣のアドバイスのみ(n=30)

鍼刺激は、BL23・ST36・CV1・CV4に行った。

 

結果:グループ1は総精子数と精子運動率、Neutral α-glucosidase(NAG)、亜鉛濃度の項目がグループ3と4に比べ有意な改善を示した。

またグループ1は、フルクトース濃度、インテグリン結合タンパク(CIB1)などの項目もグループ4に比べ有意な差を認めた。

精液パラメーターが異常な患者は精子の運動率も異常となる。この運動率と亜鉛、NAG、フルクトースは関連がある。

またCIB1の上方修正とサイクリン依存性キナーゼ1b(CKD1)の下方修正制御には、運動率と総数を向上させるように働いている可能性がある。

 

不妊症における問題は様々な報告があるが、大別すれば男性不妊と女性不妊に分けられる。

今回の報告は、男性不妊に関する報告だ。

その中で、最も多い原因とされているのが、造精子機能障害とされている。

この部分が鍼治療で改善されるならば、多くの不妊症で悩む人の手助けになる可能性があるが、現時点ではその機序も効果も根拠と呼ぶにはまだまだか。

 

次いで、女性不妊に関するレビューも今年報告されている。

 

Acupuncture in improving endometrial receptivity: a systematic review and meta-analysis.

BMC Complement Altern Med. 2019 Mar 13;19(1):61. Doi:10.1186/s12906-019-2472-1.より

子宮内膜受容性の鍼治療改善:システマティックレビューとメタアナリシス

 

対象:子宮内膜の感受性低下に関する報告から厳選した13編が最終的に残った。

それを、解析した結果、

妊娠率(11編)~RR=1.23(1.13-1.34)、P<0.00001: Fig4

胚移植率(2編)~RR=2.04(1.13-3.70)、P=0.02: Fig7

子宮内膜のパターン(6編)~RR=1.47(1.27-1.70)、P<0.00001: Fig5

子宮内膜の厚さ(9編)~SMD=0.41(0.11-0.72)、P=0.008: Fig6

出生率(2編)~RR=1.47(0.76-2.83)、P=0.25: Fig8

高品質の胚率(2編)~SMD=0.15(0.37-0.68)、P=0.57: Fig9

血清エストラジオール(E₂)(2編)~SMD=0.62(-0.30-1.53)、P=0.04: Fig10

抵抗指数(RI)(5編)~MD=-0.08(-0.15 - -0.02)、P<0.00001: Fig11

脈拍指数(PI)(5編)~SMD=-2.39(-3.85 - -0.93)、P<0.00001: Fig12

ピーク時の収縮期血流速度/拡張期血流速度(S/D)(2編)~SMD=-0.60(-0.89 - -0.30)、P<0.00001: Fig13

これらは、投薬治療、sham鍼治療、理学療法と比べて有意な改善を示した。

 

子宮内膜の感受性が低下した患者において、鍼治療は有効性と安全性が示された。しかし、今回厳選した報告は、いずれもエビデンスレベルが低い(Table 2)。そのため、今回のレビューでは、根拠としては弱いため、更なる大規模なRCTの実施が不可欠である。

 

これの著者が書いているように、今回のメタ解析のために集められた報告は、エビデンスレベルは高くないものばかりであるため、このレビューで女性不妊症に鍼が良いですよと説明することは出来ない。

せいぜい、一定の(低いが)有用性がありますよ。という程度かな。

しかし、こうした分野においては今後期待が持てる。日本からもこうしたエビデンスがそろっていけば可能性を感じる分野になりそうだ。

まずは、症例報告やコホート研究といったところから少しずつ蓄積していくことが大切だ。

同時に、その機序に関しても明らかにする努力は今後も必要であり、基礎と臨床の両輪が大切だ。