下肢の浮腫
Peripheral edema with pregabalin.
CMAJ.2013 July 9;185(10):e506. doi:https://doi.org/10.1503/cmaj.121232.より
症例:76歳、女性。
主訴:慢性疼痛
20年以上前から脊椎すべり症、脊柱管狭窄症などによる背中や下肢の痛みがあり、慢性疼痛を主訴に受診。
既往歴:L4-5、L5-S1の外科的治療を受け、神経障害性疼痛に対してプレガバリン300㎎/日処方。
その後、下肢の浮腫が出現し、徐々に悪化。滲出液を伴う慢性創傷もある。
また、蜂窩織炎も併発し歩行困難となった。深部静脈血栓症や肝硬変、低アルブミン血症などは除外されている。
浮腫は右下肢に強く、下腿の周囲径57㎝であった。
診断は何か?
回答:薬剤性浮腫(プレガバリンによるもの)
プレガバリンはリリカ🄬として、日本でも使用されている。
その副作用として、浮動性めまい34%、眠気22%、末梢性浮腫15%、心不全の悪化などがあるそうだ。
この副作用に関する記事では、
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00066754より掲載
とあり、やはり上記の副作用に注意が必要だ。
症例の患者さんは、薬剤を減量し、下腿の周囲径は10cm減少したとある。
両下肢の浮腫は、鍼灸師も遭遇する頻度が比較的高いと思われる。私もリリカ®️を使用後の体重増加例と浮腫の例を経験した事がある。
最も多い原因は生理的な浮腫だが、それ以外には心疾患、腎疾患、肝疾患、甲状腺機能低下症などが原因で起こる。
高齢者の場合では、特に今回の症例のように薬剤性の頻度は高くなるだろう。また頻度は低いが見逃すと危険なのが深部静脈血栓症といったところか。
今回の症例のように浮腫があると、少しの傷から蜂窩織炎、ひどい場合は壊死性筋膜炎を引き起こす可能性がある。鍼や灸でそうならないように細心の注意が必要になる。また水虫や爪白癬がないかのチェックも行い、場合によっては治療を促したほうがいいと思う。
あとは褥瘡も忘れてはいけないだろう。クッションを使ったポジショニングに体位変換を周りの人の協力のもと行っていける環境を整えることが求められる場合がある。
浮腫は、それ自体は大したことはないと患者さんが思うこともあるが、怖いのはそこの背景に重大疾患が潜んでいる場合、浮腫を引き金に起こる皮膚疾患や感染症だろう。
そうしたことを未然に防げるように微力ながら対応していけるようにならないといけない。