悪性腫瘍と体重減少と鍼灸治療
今回は体重減少について調べてみた。
まずは、体重減少の原因疾患別割合
J Intern Med.2001 Jan; 249(1):41-6.
Am J Med.2003 Jun 1; 114(8):631-7.
QJM.2003 Sep; 96(9):649-55.
上記3つの報告を統合して再計算(n=762)
グラフから、
悪性腫瘍
消化器疾患
内分泌疾患
が特に多い。
その他見逃したくないのが、感染症や心肺疾患あたりか。
体重減少と悪性腫瘍の種類に関して、胃がんと膵がんが影響が特に大きい。
(Am J Med.1980;69:491-7.より改変して掲載、縦軸に%付け忘れ)
0-10%の範囲はらば、体重減少が主訴で鍼灸院に来る可能性はあるだろう。
この範囲は正常な人でも起こりうる範囲だろう(体重60㎏の人の5%で3㎏、10%で6㎏)。
そうした場合にどう対応するかは難しいところになりそうだ。
このように悪性腫瘍では、体重減少を起こすことは知られている。
しかし、体重減少以外の主訴で来る可能性もあるため、そこも押さえておく必要がある。
(Asian Pac J Cancer Prev.2014;15(2):687-90.よりグラフ化して掲載、縦軸に%付け忘れ)
鍼灸院に来るとしたら、
腹部以外の疼痛
倦怠感
下痢
息切れ
あたりだろうか?
さらに、上記のグラフの主訴に影響を及ぼす要因もある。
(Asian Pac J Cancer Prev.2014;15(2):687-90.より改変して掲載)
体重減少のORは低いが、95%信頼区間の範囲内ならば、影響のある人もいるか。
今までに、パーキンソン病の治療経過で体重減少を起こした患者さんは数人経験したが、体重減少を主訴とした患者さんにはまだ会っていない。
対応をシミュレーションしておく必要がある。
今回の鍼灸治療は、化学療法による末梢神経障害に対する報告を読んだ。
A randomized assessor-blinded wait list controlled trial to assess the effectiveness of acupuncture in the management of chemotherapy-induced peripheral neuropathy.
Integr Cancer Ther.2019 Jan-Dec;18:1534735419836501. doi:10.1177/1534735419836501.より
対象(n=87)を、鍼治療群(週2回を8週間)と待機リスト群に無作為に分けた。
ベースライン時、8週後、14週後、20週後に、疼痛評価や神経障害評価、神経伝導検査などで比較検討している。
使用経穴は、LI4,LI11,PC7,TE5、SP6,ST36、LV3、ST41に0.5-1.2㎝刺入。
その結果、
8週後には、待機リスト群に比べ、疼痛評価、神経学的評価などで有意な改善が認められた。またその効果は14週まで継続したという結果であった。
化学療法による末梢神経障害の頻度は調べていないが、結構いるのだろうか?
同様に化学療法による末梢神経障害の鍼灸治療に関するシステマティックレビューでも有用性を示している(Rev Lat Am Enfermagem.2019 Mar 10; 27:e3126. doi:10.1590/1518-8345.2959.3126.)。
治療の第一選択ではないが、難治性を示した例などには補助的治療として有用な感じだ。
今回の報告もシステマティックレビューも症例数が少ないため、現時点ではここら辺が妥当なところと判断できるかな。