転倒リスクに関する報告
転倒リスクのある患者さんは、骨折リスクがつきまとう。
しかし、転倒リスクの評価は色々あるが、今回は180度回転テストによるリスク評価だ。
Validity and inter-observer reliability of the turn 180 test to identidy older adults who reported falls.
Isr Med Assoc J. 2019 Apr; 21(4): 269-74.より
転倒リスクのある高齢者を同定するための180度回転テストの有効性と評価者間信頼性
回転中の転倒は、股関節骨折のリスク増加となる。
対象:10メートル歩行可(杖歩行あり)
除外基準:視覚障害、3ヶ月以内の心肺疾患、重度のうっ血性心不全、脳卒中やパーキンソン病などの中枢神経疾患、めまい、急性腰痛症、関節炎患者であった。
78人の高齢者(平均年齢76.6±6.5歳)を3グループに分けた。
グループ1:非転倒者群(n=27)
グループ2:年1-2回の転倒する低頻度転倒群(n=26)
グループ3:年2回以上の転倒をする高頻度転倒群(n=25)
評価は、
タイムアップアンドゴー(TUG)
パフォーマンスモビリティ評価(POMA)
Berg Balance Scale(BBS)
180度回転テストは、TUGの際の折り返し地点で、ビデオ撮影し評価した。
その結果、
患者背景は、高頻度転倒群の年齢や服薬量、杖歩行者人数が有意に多かった。
180度回転テストは、
TUG(r=0.81-0.89、p<0.001)
BBS(r=-0.704-0.754、p<0.0001)
POMA(r=-0.654-0.698、p<0.0001)
と相関を認めた。
非転倒者と転倒経験ありでは、回転時の歩数が5歩の感度が100%であったが、4歩だと感度60%に落ちる。(歩数が多いほど転倒リスクが増す)
180度回転テストの歩数が5歩の場合の転倒リスク
感度40%、特異度96.3%
評価者間信頼性は、クラス相関係数0.91-0.96、p<00001と高い一致率であった。
今回の報告は、評価方法に関する報告だったが、鍼灸師の先生方でこうした評価を行なっているのはどれぐらいいるだろうか?
今回の報告ではTUGの最中の折り返し部分のみで転倒リスクが評価できるというものだった。
近年、在宅鍼灸が増えており、疾患対象が脳卒中やパーキンソン病などの中枢神経疾患の患者さんなので、この報告では除外されていることに注意して欲しい。
月に一度は自宅や施設で安全に暮らせるかを評価するのが望ましいと思われる。