都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

副鼻腔炎の頭痛について

Self-reported sinus headaches are associated with neck pain and cervical musculoskeletal dysfunction: A preliminary observational case control study.J Man Manip Ther.2019 Feb 4:1-8. doi: 10.1080/10669817.2019.1572987. より

副鼻腔炎に伴う頭痛では頚部痛も起こす

 

頭痛における片頭痛や緊張型頭痛、頚椎症性頭痛では頚部痛を伴うことが多いが、副鼻腔炎に関しては不明であった。そこで自己申告で副鼻腔炎がある患者(N=31、女性77.4%、年齢43.7歳)と頭痛のない患者(N=30)を対象に頚部痛の関連を調べた。

 

 

その結果、副鼻腔炎患者の症状は、

顔の痛みや圧迫感:90.3%(N=28)

鼻腔の充血・充満:83.9%(N=26)

鼻閉:87.1%(N=27)

鼻水:90.3%(N=28)

低血糖:54.8%(N=17)

頭痛:100%(N=31)

疲労:90.3%(N=28)

咳:51.6%(N=16)

耳の痛みや圧迫:61.3%(N=19)

があった。

 

 

副鼻腔炎患者における頭痛と頚部痛の関連では、

副鼻腔炎+頭痛+頚部痛:83.9%(N=26)

頚部痛が頭まで広がる:67.7%(N=21)

頭痛は頚部の動きや姿勢で悪化:74.8%(N=23)

などがあり、副鼻腔炎による頭痛と頚部痛は関連があるとした。またこの頚部痛はC1-3の頚椎の動きとも関連があるとされた。

この報告から、副鼻腔炎の治療として、頚部痛も行う必要があることが分かる。また、その際にはC1-3の頸椎が治療ポイントとなるため、筋肉としては、後頭下筋群あたりが標的筋となりそうだ。

しかし、この報告では、副鼻腔炎が自己申告であり、細菌性なのかウイルス性なのかが明記されていない。鍼灸治療を行うばあい、これらの鑑別を行う必要が出てくる。

ウイルス性は拡散力が強いため、副鼻腔炎に伴う症状も咽頭や気道にも及ぶため、鼻水、咽頭痛、咳などを引き起こす。しかし細菌性では、多くは鼻症状のみとなることが多い。

 

(追記)

Table3の Headache locationを改めてみてみると、

その都度、痛む部位は変化する:32.3%(N=10)

常に同じところに頭痛が起きる:25.8%(N=8)

両方:41.9%(N=13)

とある。

 

片頭痛では片側性が多いが、毎回痛む部位が同じだと片頭痛の可能性は下がるとされている。これを「side-locked headache」と呼ぶ。(J Headache Pain.2016 Dec;17(1):95.)このグラフは一次性頭痛におけるside-locked headacheの頻度を表しており、片頭痛は約20%しかない。つまり、いつも同じ側の頭痛が起きる頻度は片頭痛では低いということになる。

J Headache painの文献からグラフ化して掲載

 

今回、副鼻腔炎でも同様の現象が頭痛で起こることを観察している。

症例数が少ないため、比較は出来ないが、他の二次性頭痛に比べ、頻度は高い傾向を示している。頭痛の部位や性状を聞くのと同時に、いつも同じ部位が痛むのか?それとも違う部位なのか?を確認することは重要と思える。

 

J Headache Painの文献からグラフ化して掲載

 

副鼻腔炎は発症から4週以内を急性、4-12週を亜急性、12週以上を慢性とする。

Acute bacterial rhinosinusitis in adults: Part1. Evaluation.

Am Fam Physician.2004 Nov 1;70(9):1685-92.より

副鼻腔炎の検査後確率を変動させる症状や所見

(論文から、見やすいように改変して掲載)

 

いずれも決め手にかけるが、上気道感染症の後に副鼻腔炎を引き起こす二相性の変化が最も臨床的か?

 

Accuracy of signs and symptoms for the diagnosis of acute rhinosinusitis and acute bacterial rhinosinusitis. The Annals of Family Medicine.2019 Mar; 17(2):164-172.より
急性副鼻腔炎の検査特性
(改変して掲載)
 
検査特性に関する報告でも、頚部痛に関しては記載されていない。今回取り上げた報告は、予備的研究とのことなので、今後の報告に期待が持てる。