腰仙移行椎の報告
Role of liac crest tangent in correct numbering of lumbosacral transitional vertebrae.
Turk J Med Sci.2019;49:184-9.より
腰仙移行椎の報告
腰仙移行椎(LSTV)というのを、今回初めて知った。
今まで腰痛患者さんで、見逃していた可能性がある。
猛省しながら読んでみた。
LSTVとは、先天的に第5腰椎(L5)が、仙骨の1番(S1)のような形態をとることを仙椎化、
S1が腰椎のような形態をとることを腰椎化と呼ぶ。
この2つをLSTVと呼ぶ。
発生頻度は、4~36%の範囲で、比較的一般的にあるとされている。
L5神経根症の所見を持つ患者で、レントゲンを撮影する仕方によっては、S1と誤認してしまう可能性がある。
患者さんの正しい評価を行うために、様々な方法が行われているが、腸骨稜ライン(ICT)を目印とした正しい計数ができるか検討している。
対象は58人のLSTV患者と有しない55人の計113人で比較した。
LSTVは、その形態の程度で評価が変わり、
分類にはCastellvi分類がある。
Ⅰ型:異形成の横突起の存在
Ⅱ型:偽関節を成す(部分LSTV)
Ⅲ型:骨融合(完全LSTV)
Ⅳ型:Ⅱ型とⅢ型の組み合わせ
になり、それぞれの型はさらに「a」と「b」に細分類される。
今回のLSTVの分類別では、Ⅲ型が60.3%と最も多く、63.7%に両側病変が認められた。
ICTラインは、対象群(LSTVなし)と比べて、LSTV患者の多くはL4上を通過していた。
ICTラインを基準としたL5腰椎の同定は、精度が高くないという結果であった。
グラフにして掲載、縦軸に%の付け忘れ
グラフをみると良く分かるが、LSTVのない対象群の腸骨稜ラインは1/3ずつあることが分かる。
一方、LSTV群ではL4上を通ることが多い。
この他、日本でのLSTVの発生頻度を調べた報告では、
4.8%(整形外科と災害外科.1991;40(1):245-8.)という結果で、Ⅱ型とⅣ型がやや多い傾向(上記の分類とは異なる)。
神中分類
Ⅰ型~横突起の接触がある、Ⅱ型~関節をなす、Ⅲ型~片側性癒着がある、Ⅳ型~両側性癒着がある
17%(Spinal Sugery.2000;14(3):201-8.)という発生頻度(腰椎椎間板ヘルニア患者が対象)。
9.3%(整形外科と災害外科.1994;43(4):1239-42.)、Ⅱ型が多く、腰痛も多く発生している傾向。
13.9%(整形外科と災害外科.1988;36(3):809-12.)、Ⅲ型が多い。
と4.8~17.0%の範囲で起こっている。
鍼灸師は、腰の経穴に鍼を行う際に腸骨稜を基準に取穴をすることが多い。
今回の報告でもある腸骨稜ラインを日本ではヤコビ線、海外ではtuffier's lineと呼ぶ。
学生の頃は、このヤコビ線はL4-5間と習っているが、今回の結果から分かるようにLSTVの有無に関わらず、椎間がずれている可能性がある。
安易に腸骨稜の基準だけで取穴するのは治療成績にも影響する。
ヤコビ線に関する報告として、女性やBMIの高い人では、L3またはL3-4間を同定する指標として考えた方が好ましいとする報告(J Anat.2007 Feb;210(2):232-6.)や腹囲・BMI・年齢によってヤコビ線のランドマークされる椎体は変化することが報告されている(BMC Anesthesiol.2015 Jan 21;15:9.)
J Anat.2007 Feb;210(2):232-6.より掲載
腰部の経穴を取穴する際や腰椎椎間板ヘルニアの所見を取る際は、ヤコビ線だけでなく、上下の椎体の触診も丁寧に行い、所見と触診による判断を行う必要がある。またLSTV患者か不明な場合も多いだろう。その際は、触診では分からないことも多いと思われるため、治療を行う際にはそのことも考慮した治療プランの説明や施術を行うことになるだろう。