都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

腰痛の意外な原因

本日は、腰痛を起こす意外な疾患についてです。

少なくとも私は知らなかったです。

 

Kashefiolasl S, et al. MRI-detection rate and incidence of lumbar bleeding sources in 190 patients with non-aneurysmal SAH. PLoS One.2017 Apr 3; 12(4): e0174734.

動脈瘤くも膜下出血を有する190人の患者におけるMRI検出率および腰椎出血発生率

 

タイトルから分かるように、腰痛を起こす意外な原因は、くも膜下出血(SAH)です。

SAHは、頭蓋内病変(脳動脈瘤や血管奇形)が原因で起こることが多いのですが、SAHのうち約15%は頭蓋内病変がない自然発生的なSAHがあります。これを動脈瘤性SAH(NASAH)と言います。

 

214例のNASAHを調査した報告では、年々NASAHが増えつつあることを報告しています(J Neurosurg. 2016 Jun; 124(6): 1731-7.)。

 

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(J Neurosurg. 2016 Jun; 124(6): 1731-7.より改変して掲載、縦軸はn数) 

 

NASAHが起こる原因は、まだ不明な点も多いようですが、血管奇形、穿孔動脈または小静脈瘤破裂、脳底動脈解離、外傷、抗血栓薬、脊髄血管奇形などが考えられているようです。

このうち、脊髄関連のSAHの発生率は非常に低いが、脊髄麻酔などを含む外傷性、血管奇形と抗凝固薬や血小板減少症などが関連して発生することが多いようです。

その場合くも膜下出血と言えば頭痛を連想しますが、腰痛を起こすこともあるようです。

 

対象は1999年~2012年にドイツの病院に入院した1404人のSAH患者。

このうち、脳動脈瘤や脳血管奇形が原因のSAHは除外(n=1214)。

最終的に190人(14%)が対象となった。

 

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これらの患者のCTや腰椎穿刺などを行い、臨床症状などを調査。

患者背景:

NASAHのうち、中脳水道周囲のSAHをPM-SAH、非中脳(脊髄など)のSAHをNPM-SAHとした。

PM-SAHとNPM-SAHは少しNPMの方が多いけど、約半々。

年齢はNPMの方が年齢と女性割合が高い。

両者とも腰痛や下肢痛が出ないことが多いけど、まれに腰痛などを起こすことがある。

PMでも2%いるのは、なんでだろう?

中脳水道周辺は、疼痛と関連する経路があるから、その関係?

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PMでは、CT陰性はなかったけど、NPMは22%がCT陰性であった。腰椎穿刺で確定した。

またNPMの2名はMRIで脊髄疾患がみつかった(SAH全体:n=1404のうち0.1%の割合)。

この2名は、両者ともL1/2の病変。

37歳男性:頭痛・嘔吐・腰痛/坐骨神経痛でCT陰性

24歳男性:頭痛・感覚異常・腰痛/坐骨神経痛でCT陰性

だった。

 

37歳男性:下図のMRI T1強調画像では、

Aは術前の様子でL1/2に腫瘤があるが、Bでは術後で除去されている。

仙骨にはまだ腫瘤っぽいのがある。

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24歳男性:L1/2のレベルで異常ありの所見。術後には除去できた。

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頭痛と腰痛(坐骨神経痛)が同時に発症した場合は、脊髄由来のSAHの可能性が少しあるため、精密な検査をした方がいい。その場合、CTよりもMRIや腰椎穿刺の方が検出率は上がる。

また、腰痛原因がL1/2の可能性が高いと思われますので、デルマトーム上では鼠径部痛のようになるかもしれません。

腰椎椎間板ヘルニアなどで、この部位に起こることはまれですので、その場合はワンランク危険度を上げた方がよさそうです。