胆嚢癌のリスクファクターについて
本日は、胆のう癌のリスクファクターについて。
遠藤格、他.胆嚢癌の疫学とリスクファクター.胆道.2019;33(2):234-243.
胆嚢癌の早期がん(T1)での5年生存率は、ほぼ100%だが、無症状のことが多く、気付かれにくい。
進行がん(ステージⅢ・Ⅳ)での5年生存率は、外科的手術後も5-20%と低い。
胆嚢癌の疫学(世界)
日本;10万人に7人の割合で発生
日本国内の地域性;
東日本と九州の死亡率が高い傾向にあるよう。
HTLV-1の関与が示唆されている?
それ以外の関与として、リスクファクターがある。
胆嚢癌のリスクファクター
1.胆嚢結石(胆石)~胆のう癌の69-96%に胆石あり。胆石保有率の高い国と胆嚢癌発生頻度の高い国は類似する。
日本では、人口の10%が胆石保有者と推定。胆石の家族歴があると胆のう癌のリスクは3.2-3.6、家族歴と既往歴で胆石がある場合のリスクは57倍。
2.胆嚢腺筋腫症(ADM)~直接的な前癌病変ではなく、良性疾患だが慢性炎症から発がんにつながることがある。
3.肥満・糖尿病~BMI30-35の男性リスク比1.76・女性2.13、インスリン製剤自体に腫瘍増殖作用があると考えられている。
4.細菌感染~ピロリ菌やサルモネラ菌などの関与が報告あり。
5.喫煙
6.飲酒
7.香辛料・重金属~赤唐辛子や農薬など、日本の農薬は改善されつつある
8.膵胆管合流異常症
こうした疫学的リスクを有する人には、生活習慣の指導を。
ハイリスク(3センチ以上の胆石、胆石の家族歴、糖尿病、肥満、胆石の伴うADMなど)は胆嚢の予防的腹腔鏡下胆摘も視野に入れる。
この予防として、胆嚢を摘出する是非については、議論の余地あり。
以前、脊損患者さんを受け持っていた際に胆石が発覚し、予防的腹腔鏡下胆摘術を受けた方がいました。その方は食事療法なども家族の協力のもと行い、肥満の解消にも取り組んでました。
疫学的な検討で、胆のう癌の発生リスクが高い地域性・家族歴などを鑑みて考えていく必要があり、難しいところです。
鍼灸師はハイリスクがないか?リスク因子があればその改善指導などを行う必要があると思います。