逆流性食道炎の原因となりうる食道裂孔ヘルニア
本日は、食道裂孔ヘルニアについてです。
以前も取り上げています。
「胃食道逆流症の疫学とリスク因子」
https://blog.hatena.ne.jp/ararepyon/ararepyon.hatenablog.com/edit?entry=17680117127174154239
その中で、リスク因子として食道裂孔ヘルニアがあることを書きました。
先日、「K2」という医療マンガを読んでいましたら出てきました。
藤田剛、他.健診受診者における上腹部症状の性別と年齢による違い.総合健診.2019;46(2):266-272.
多施設共同前向き研究
上部消化管内視鏡検診受診者7278例(22-87歳、中央値52歳)が対象。
自己記入式問診表を用いて
胃食道逆流症(GERD)症状~胸やけ・胃酸の逆流
食後愁訴症候群(PDS)症状~食べきれない・もたれ感
心窩部痛症候群(EPS)症状~みぞおちの焼ける感じや痛み
の頻度を性別や年齢で調査。
結果
胃食道逆流症(GERD)症状を訴える割合:37.4%
食後愁訴症候群(PDS)症状を訴える割合:28.4%
心窩部痛症候群(EPS)症状を訴える割合:21.2%
性差と年代別
GERD症状は男性に多いが、PDSとEPS症状は女性に多い。
また有意な差はではないが、60歳代のGERD症状は頻度が少し下がる傾向。
3つの症状がオーバーラップするのは女性に多く、男性はGERD症状のみが多い。
こうしたGERD症状を引き起こす原因として、食道裂孔ヘルニアが1つある。
小林克己、他.Upside Down Stomachを呈した食道裂孔ヘルニアの3例.KMJ.2019;69:243-248.
症例1:76歳女性。主訴は逆流症状と食思不振。胃がんに食道裂孔ヘルニアを合併。
症例2:78歳女性。主訴は嘔気嘔吐。
症例3:68歳女性。主訴は継続的な嘔吐と通過障害。GERDの既往歴。
これらの3例は胸腔内に全胃が陥入していた。
こうした食道裂孔ヘルニアは日本でも増加傾向にある。
GERD研究会による報告では、初回内視鏡施行の49.3%に食道裂孔ヘルニアが認められたとされている。
また女性の高齢者に多くなる。
横隔膜食道靭帯の脆弱化
椎体骨折
亀背
肥満による食道裂孔の開大
腹圧の上昇
などが理由。
食道裂孔ヘルニアのタイプは、
滑脱型(Ⅰ型):95%の頻度
傍食道型(Ⅱ型)
混合型(Ⅰ型+Ⅱ型のⅢ型)
縦隔内へ他臓器が入り込んだ複合型(Ⅳ型)
外科的治療としては、腹腔鏡手術が多くなってきた。手術時間は平均224分(3時間40分ぐらい)。
GERDが疑われる患者さん(特に高齢女性)には、一度内視鏡検査を勧め、食道裂孔ヘルニアがないかを確認してもらった方がいいかもしれません。