都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

妊婦の生理学

妊婦の生理学.

日臨麻会誌.2018;38(4):533-7.より

 

妊娠時は、週数に応じた生理的変化を起こす

 

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血液学的変化~血液循環低下の保護と分娩時の出血に備える

循環血漿量・血液量は、妊娠初期より増加傾向(出血に備える)

赤血球量は、初期はいったん下がるが、12週頃より増加傾向

ヘマトクリット値は、初期から低下傾向(胎盤の微小循環に有利になる)

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白血球数は、徐々に増加し、出産後はさらに増加。産褥4-6週で元に戻る

血小板数は、出血で一時的に減少するが、産褥8日目で元に戻る

凝固機能亢進・抗凝固作用は低下+線溶機能は全体的には抑制される→分娩時の出血に対しては有利に働くが、血栓症やDICのリスクに注意

 

循環動態~心機能亢進・血圧変動(子宮や胎盤への血液供給など)

心臓の位置は、上方に転位し、心尖部は左外方に移動

心拍出量は増加(血液量増加に伴う)→32-36週でピーク

心拍数増加(10-20%増加)

妊婦の20-30%で心雑音が聴取される

妊娠中期以降は、仰臥位で子宮による下大静脈圧迫が起こり、静脈還流量が減少することで、ショックを伴う「仰臥位低血圧症候群」に注意(心拍出量の変動)

血圧は、軽度の低下(NOやプロゲステロンによる血管拡張作用や血管抵抗の低下による)を起こす→おそらく、分娩時のいきみなどで血圧が上昇するのに備えている?

 

呼吸機能~妊娠中期以降、胸郭の拡大に伴う呼吸補助・酸素消費量増加

子宮が増大することで、横隔膜が挙上・胸郭の拡大→呼吸数は変動しない(呼吸数異常は感染症などの指標となる)

酸素消費量は増加→呼吸性アルカローシス→腎臓から重炭酸イオンの排泄→PH7.40-7.45と調節される

 

腎・尿路系の変化~初期より現れ、頻尿傾向となる

血漿流量(RPE)・糸球体濾過量(GFR)は、増加傾向

血液尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン、尿酸値は非妊娠時より低下

プロゲステロンにより、尿管の機能が低下+子宮による圧迫→水腎症や水管症に起因した腰痛が起こることも(右>左)

膀胱は、子宮増大により、後方から圧排されるが、左右に伸張し、膀胱容積に変化は少ない

膀胱粘膜の充血・膀胱頚の伸展・骨盤神経の圧迫→頻尿傾向

 

消化器の変化

プロゲステロン(+モチリン)による消化管の蠕動抑制→食道下部括約筋の緊張低下・胃酸分泌過多→げっぷや逆流性食道炎による胸焼けが生じやすい

妊娠後期で、子宮が胃を上方圧排し、胃内容が逆流しやすくなる。また、腸管も圧迫し、便秘傾向となる

肝機能は、血清総コレステロールやトリグリセリドの著増

アルカリフォスファターゼも著増(胎盤由来?)

プロゲステロンによる胆嚢収縮抑制で胆汁うっ滞・胆汁内コレステロール飽和上昇→コレステロール胆石が発生する

直腸や肛門部の血流うっ滞で、便秘や痔が発生することもある

 

代謝の変化~妊娠糖尿病に注意

食間の軽度低血糖→食後に上昇しやすい

インスリン分泌は亢進+インスリン抵抗性増強→血糖は維持

後期には、インスリンの感受性が低下→妊娠糖尿病の発生に関与

高脂血症の状態となるが、母体はエネルギー源として利用し、グルコースアミノ酸は胎児の成長に利用される

 

骨格の変化~主に脊椎と骨盤の変化

中期以降には、腰椎の前弯→腰痛の原因となる

立位時には、さらに胸椎の後弯が過剰となり、バランスをとる

骨盤は可動性が増加するが、産褥後3-5か月で元に戻る。しかし疼痛や歩行障害が残存するケースもある

 

妊娠時には、様々な変化が体の中で起こる。箇条書きでまとめただけでもこんなに変化が起こるのだから、実際の妊婦さんはすごい

こうした変化を男性は少しでも知り、どんなサポートが出来るのかを考えていくことが必要だ。でも、何が出来る? これからも考えていこう