うつ病に対する鍼治療のRCT
Manual or electroacupuncture as an add-on therapy to SSRIs for depression: A randomized controlled trail.
J Psychiatr Res.2019 Apr 9;114:24-33.より
うつ病に対するSSRIへの補助療法としての手動または電気鍼療法:無作為化対照試験
うつ病性障害は、気分の低さ、興味の喪失、罪悪感または自尊心の低さ、睡眠障害、食欲の低下、疲労、集中力の低下といった症状が現れる。
2015年には世界人口の4.4%がうつ病とされていると報告がある。
その治療としてSSRIが用いられるが、その奏効率は50%で、副作用として吐き気、体重増加、性機能衰退なども伴うとされている。
そこで、鍼治療による研究も報告があり、補助的治療として有用性が期待されている。
これまでの報告は、鍼治療による報告、鍼通電療法による報告と単独治療の比較はあるが、両方の比較をされた報告はない。
そこで今回、中等度から重度のうつ病患者を対象に、両者を比較したRCTを実施。
対象は477人を3群に無作為に分けた。
SSRI+MA(鍼治療)~161人
SSRI+EA(鍼通電療法)~160人
SSRIのみ~156人
鍼治療部位
経過中の脱落例は、その時点のスコアを継続して解析するITT解析を採用。
患者背景に3群間で差はなし。
評価方法
HAMD-17をベースライン・1週目・2週目・4週目・6週目・10週目に評価
HAMD-17の奏効率(ベースラインから総スコアが50%以下を改善とした)
HAMD-17の寛解率(合計スコア≦7点)
HAND-17早期発症率(ベースラインから20%以上のHAMD総スコアの減少)
HAMD-17総スコア
自己評価うつ病スケール(SDS)
うつ病尺度(GI)
有効性の指標(EI)
SSRIの投与量を調整した患者数を含むClinical Global Impression(CGI):臨床全体印象
有害事象(SERS)
について行った。
その結果、
HAMD-17奏効率は、6週目においてSSRIに比べ鍼群とEA群が有意な改善を示した。
HAMD-17寛解率は、6週目においてSSRI群に比べEA併用群で有意な改善が認められたが、鍼治療群にはなかった。また鍼群とEA群でも有意差はなし。
鍼治療併用のNNT=12.5
EA併用のNNT=7
早期発症率は、1週目にSSRI群に比べ鍼群とEA群は有意差が認められた。また鍼群とEA群には有意差はなし。
HAMD総スコアは、SSRI群に比べ鍼群とEA群ともに有意な改善が認められた。
SDSは、1週目・2週目・4週目・6週目において、2つの鍼群は有意な改善が認められた。
フォロー期間では、鍼群の84%が、EA群の83%がSSRI単独治療に戻ったが。追跡終了時にも3群間には有意な差が継続していた。
有害事象
SSRI群から9件の報告、鍼群から9件の報告、EA群から10件の報告があった。
これより鍼治療ないしはEAの併用は、SSRI単独治療に加えることで有益な結果を示す。
今回の報告は、うつ病症状の改善に関する報告であり、その機序に関しては踏み込んだ研究はされていない。
うつ病と診断されてなくても、患者さんの中にはうつ傾向を示すことは多い。
そんな時に、こうした治療をプラスすることで、治療効果は向上する可能性がある。