都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

頭痛と頚部痛の関連

頭痛には、しばしば頚部痛が併発することは知られており、このblogでも、その関連性について取り上げたことがある(副鼻腔炎に伴う頭痛と頚部痛の関連性を参照)

 

主訴が頭痛で、随伴症状として頚部痛があると判断に迷うことがある。

頚部痛が頭痛を起こすのか?

それとも、頚部痛は頭痛の症状の1つなのか?

悩ませてくれる。

 

鍼灸師の中には、そんな事は気にせずに、両方治療すればいいと考える先生もいるだろう。

しかし、鍼を行うにあたり、刺激量をどのくらいにするべきか?を決定する上で、この違いは決して小さくはない。

患者さんの負担は出来るだけ抑えつつ、効果を求めるためだ。

 

今回の報告は、頭痛患者を対象に頚部痛の発生頻度や特徴をアンケート形式で調査したものだ。

エビデンスレベルは低いかもしれないが、細かく調べており、非常に参考となる報告だった。

 

Clinical haracterization of neck pain in migraine.

Neurology India.2018 Mar-Apr;66(2):

頭痛における頚部痛の臨床的特徴

 

片頭痛は、一般的なありふれた疾患であり、罹患率は世界人口の12%(男性6%、女性18%)とされている。

 

片頭痛には、頭蓋外症状が併発することは知られている。これを体性疼痛症候群と呼ぶ。

その1つに頚部痛があるが、頚部の筋肉の病因が仮定されている。

そのため、緊張型頭痛と間違われることがある。

 

最近の報告では、頚部痛は頭痛のない患者(68.4%)に比べ、一次性頭痛のある患者では85.7%と高い頻度で起こることが報告されている。この一次性頭痛の割合は、緊張型頭痛で88%、片頭痛で76%であったとされている。

この片頭痛を「頚性片頭痛」と便宜上呼ぶことにする。

運転手やパソコン作業者に多い。

また、いくつかのケースでは、頚椎症や首の外傷も同時にあり、これが引き金で片頭痛を起こしているかもしれない。

これらの病態生理は、いまだ不明である。

この報告は、頚性片頭痛の発生率を調査し、臨床的な特徴ならびに関連する症状を調査することにある。

 

18ヵ月の調査機関を設け、片頭痛を有する391人を調査した。

片頭痛の種類

前兆のない片頭痛が82.7%を占めた。

前兆のある片頭痛では、視覚的前兆(69.2%)、感覚的前兆(23%)、脳幹前兆(7.6%)があった。

 

少なくとも5回の片頭痛発作を起こした患者のうち、166人(42.5%)に頚部痛が常に起きていたと答えた(上記の先行報告とは異なり、頚部痛の併用率が異なるのは、頭痛発作の回数が異なるためと考察している)。

このうち102人(61.5%)が女性(35.8±12.5歳)で、主婦(35.3%)または学生(26%)であった。

166人のうち、53人(32%)が頚部痛を起こす病歴があり、これが引き金で片頭痛が起こると考えられた(引き金型)。

残りの113人(68%)は、頚部痛は片頭痛の症状の1つと捉えられ、頭痛のないときは、頚部痛も起こらなかった(関連型)。

これより、53人(32%)が頚性片頭痛の有病者とした。

本文の図を改変して掲載

 

片頭痛の部位は、54.2%が片側性で左右のいずれかは変化する(side-shifting headache)と答えたが、27.8%は常に右か左に固定された頭痛であると答えた(side-locked headache)。そして、18%は両側性か全般性の頭痛であるとした。

side-locked headacheの特徴は、引き金型(47.7%)に比べ、関連型(69.8%)に有意に多い(p=0.025)。

 

片頭痛の性状は、ズキズキする拍動性と答えたのが75.2%で、破裂性と答えたのが6.7%、混在性が16.6%であった。

拍動性頭痛は、引き金型(84%)の方が、関連型(66%)よりも有意に多かった(p=0.035)。

本文より改変して掲載

 

頭痛強度は、軽度6.5%、中等度51.2%、重度42.3%であった。しかし、この強度は発作中に変化していた。

片頭痛の関連症状の中で、光過敏症(94.6%)が最も多く、次いで悪心(91.5%)、音過敏症(88.5%)であった。

頻度は低いが、めまいや嘔吐、皮膚異常痛があった。

発作中は、82.5%(n=137)にこの関連症状が1つ以上認められた。このうち、30%は4つ以上を有していた。

 

患者の70%は、身体活動で悪化していた。

37.3%の患者には、自律神経症状がみられた(頭皮の腫脹[限局型or全般型]、流涙、まぶたの浮腫、鼻漏、顔面や額の紅潮・発汗など)

 

すべての患者は4時間以上の持続性頭痛であった(100%)。そして、三叉神経・自律神経性頭痛の診断基準を満たすものはいなかった。

 

頚部痛の特徴

痛みの性状~こわばり/痙攣様(43.4%)、ズキズキ(26.5%)、ビリっとした電気様(21.1%)、鈍い痛み(7.2%)、しびれ(1.8%)

こわばり/痙攣様の頚部痛は、引き金型(54.7%)の方が、関連型(35.3%)よりも有意に多かった(p<0.01)。

部位~上頚部が原因(95.2%)、片側性(82.5%)、動作時痛と頚部の圧痛(67.5%)、頚椎症(26.5%)を有する

 

頚椎症を有する片頭痛患者と頚椎症なしの頚性片頭痛患者に分けた年齢別分布

年齢が増加するに従い、頚部痛を有する片頭痛患者は増え、その要因は頚椎症を有する者が増える傾向にあったが、統計学的な有意差はなかった。

これより、頚椎症は関連性であり、片頭痛患者の頚部痛には影響しないものと考えられる。

本文より改変して掲載

 

薬物乱用性頭痛~166人中43人(25.9%)が薬物乱用性頭痛の特徴を有していた(他の報告での有病率は30-50%)。

薬剤の種類~NSAID(34.6%)、パラセタモール(23.1%)、アスピリン(7.7%)、併用としてはトラマドールとパラセタモール(57.7%)と多く、NSAIDとパラセタモール(42.3%)が次いで多かった。

トリプタンを服用しているものはいたが、その人たちで薬物乱用性頭痛を呈したものはいたかった。

 

まとめると、こうなる。

まずは主訴を頭痛と決定した場合、二次性頭痛の除外を出来る限り行う(頚椎症など頚部痛に関連する疾患は否定できなくても、ここでは大丈夫)。ついで一次性頭痛である片頭痛や緊張型頭痛などの鑑別を行う際に、頚部痛について考えた方が良さそうだ。

片頭痛の可能性が高い場合、以下の項目と照らし合わせて、関連型か引き金型かを鑑別することになる。

片頭痛と頚部痛の関連性について調査した結果、

片頭痛に頚部痛が併発する割合:42.5%

頚部痛が片頭痛を引き起こす引き金になっているタイプ:32%→頚性片頭痛とする。

頚部痛は片頭痛の関連症状の1つというタイプ:68%

頚部痛は、頭痛が始まる前駆症状として始まり、頭痛が消失すると頚部痛も消失する。これは関連型の人に多く、頚部の圧痛や動作時痛を伴うものは引き金型に多い。しかし、頚部痛が頭痛により悪化するタイプもあり、これは混合型と考えられる。

頚椎症が引き金型と関連があるかと思われたが、頚椎症との関連性を示す傾向はあったが、有意差はなし。

 

片頭痛かどうかを鑑別するには、

身体活動で悪化(70%)、4時間以上の持続時間(100%)→小児や児童の場合は、4時間以内のことがあるので注意

side-locked headache(27.8%)は、片頭痛の可能性を少し下げる。片頭痛の場合は関連型に多い。

拍動性頭痛を呈するのが75.2%で、引き金型の方が多い(拍動性でなければ、片頭痛の可能性は少し下がる)。

光過敏・悪心・音過敏などや自律神経症状を有することが多い。

頭痛の強度は当てにはならない。

 

こんな感じになりそう。