咳の原因疾患と診断精度
本日は、咳の病歴や身体所見の精度についてです。
Otoshi T, et al. A cross-sectional servey of the clinical manifestations and underlying lllness of cougf. In Vivo.2019 Mar-Apr; 33(2): 543-549.
咳の最終診断に影響する要因を特定する目的。
対象は、2006年10月~2007年9月までに、主訴が咳で訪れた463人の患者。
患者背景と咳の出る時間帯
20~30代で4割。
慢性咳嗽が2割。
咳の症状や要因と病名
痰を伴う湿性咳嗽が35%
風邪がきっかけで咳がでたのは65%
急性呼吸器感染症と感染後咳嗽で64%
咳の疾患割合
気管支喘息:14%(30人) 咳喘息:7%(14人) アトピー性咳嗽:1%(2人)
逆流性食道炎:1%(3人) COPD:3%(6人) 副鼻腔気管支症候群:3%(6人)
急性呼吸器感染症:32%(67人) 百日咳:1%(1人) 感染後咳嗽:32%(67人)
肺がん:1%(2人) 間質性肺炎:3%(6人) 心源性咳嗽:1%(2人) その他:1%(3人)
病歴の診断精度
65歳未満の特異度はすべて80%こえているので、なんでもあり得ると思うのがいい。
女性は、肺がんと間質性肺炎は100%否定となっているが、N数が少ないので参考程度(私見)。
アトピーの既往・日内変動がなければ、アトピー性咳嗽の可能性は下がる。
季節変動があれば、気管支喘息の可能性が上がり、なければ可能性は下がる。
症状と要因からみる診断精度
気管支喘息は、喘鳴を伴うことが多く、
逆流性食道炎は胸やけが多く、日内変動や季節性はない。
副鼻腔気管支症候群は、女性のみだったが、痰の増加が認められた。
百日咳は睡眠中に起こる咳に悩み、話している際も咳が出る。
心源性咳嗽は、労作性呼吸困難がある。
問診では、(尤度比は算出して掲載)
季節の変化で咳がでるか?
Yes: 気管支喘息の可能性が上がる
No:気管支喘息の可能性が下がる
(LR+:6.4 LR-:0.19)。
喘鳴があるか?
Yesなら気管支喘息の可能性が上がる
(LR+:3.88 LR-:0.37)
アトピー性疾患は既往があるか?
Yes:アトピー性咳嗽の可能性が上がる
No:アトピー性咳嗽の可能性が少し下がる
(LR+:∞ LR-:0.29)
咳は日内変動があるか?
Yes:アトピー性咳嗽の可能性が少し上がる
No:アトピー性咳嗽の可能性が下がる
(LR+2.63 LR-:∞)
咳と一緒に胸やけもあるか?
Yes:逆流性食道炎の可能性が上がる
No:逆流性食道炎の可能性が下がる
(LR+:4.54 LR-:∞)
咳と一緒に痰も増えたか?
Yes:副鼻腔気管支症候群の可能性が少し上がる
No:副鼻腔気管支症候群の可能性が少し下がる
(LR+:2.18 LR-:0.27)
睡眠中も咳がでるか?
Yes:百日咳の可能性が上がる
No:百日咳の可能性が下がる
(LR+:4.35 LR-:∞)
労作性呼吸困難があるか?
Yes:心源性咳嗽の可能性が上がる
No:心源性咳嗽の可能性が下がる
(LR+5.88 LR-:∞)
今回の報告は、咳に関する様々な症状や要因などが、診断にどの程度の影響を及ぼすのか?がよく分かる非常に勉強になる報告でした。