2020-10-24 急性の咳とハチミツ Review Cochrane Database Syst Rev . 2014 Dec 23;(12):CD007094. doi: 10.1002/14651858.CD007094.pub4. Honey for acute cough in children Olabisi Oduwole 1, Martin M Meremikwu, Angela Oyo-Ita, Ekong E Udoh 12ヶ月~18歳の急性咳嗽を呈した899例(6RCT)。 ハチミツ・デキストロメトルファン(鎮咳薬)・ジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン薬)・無治療・プラセボで咳の頻度などを比較。 その結果、 ハチミツは、無治療・プラセボに比べて、咳の頻度を減らす可能性あり。 ハチミツと比べデキストロメトルファンは同程度の効果の可能性あり。 ハチミツと比べジフェンヒドラミンよりも効果が高い可能性あり。 咳止めの薬には、中枢性鎮咳薬と末梢性鎮咳薬とがある。 中枢性は咳中枢に作用し、末梢性は気管や気管支に作用する。 また中枢性には麻薬性と非麻薬性のものがある。 咳止めの効果としては、 中枢性麻薬性>中枢性非麻薬性>末梢性鎮咳薬となる。 今回の研究で使用されたデキストロメトルファン(メジコン®)は、中枢性非麻薬性のもの。 結果またはサブグループのタイトル 研究数 参加者数 統計的手法 効果の大きさ 1ハチミツ対デキストロメトルファン 2 平均差(ランダム、95%CI) 小計のみ 1.1咳の頻度(平均改善) 2 149 平均差(ランダム、95%CI) ‐0.07 [‐1.07、0.94] 1.2咳の重症度(平均改善) 2 149 平均差(ランダム、95%CI) ‐0.13 [‐1.25、0.99] 1.3厄介な咳(平均改善) 1 69 平均差(ランダム、95%CI) 0.29 [‐0.56、1.14] 1.4子供の睡眠(子供の睡眠スコアに対する咳の影響) 2 149 平均差(ランダム、95%CI) 0.03 [‐1.12、1.19] 1.5両親の睡眠(両親の睡眠スコアに対する咳の影響) 2 149 平均差(ランダム、95%CI) ‐0.16 [‐0.84、0.53] 1.6複合平均改善 1 69 平均差(ランダム、95%CI) 2.32 [‐1.24、5.88] 2蜂蜜対ジフェンヒドラミン 1 平均差(ランダム、95%CI) 小計のみ 2.1咳の頻度(平均改善) 1 80 平均差(ランダム、95%CI) ‐0.57 [‐0.90、‐0.24] 2.2咳の重症度(平均改善) 1 80 平均差(ランダム、95%CI) ‐0.6 [‐0.94、‐0.26] 2.3子供の睡眠(子供の睡眠スコアに対する咳の影響) 1 80 平均差(ランダム、95%CI) ‐0.55 [‐0.87、‐0.23] 2.4両親の睡眠(両親の睡眠スコアに対する咳の影響) 1 80 平均差(ランダム、95%CI) ‐0.48 [‐0.76、‐0.20] 3ハニー対「無治療」 2 平均差(ランダム、95%CI) 小計のみ 3.1咳の頻度(平均改善スコア) 2 154 平均差(ランダム、95%CI) ‐1.05 [‐1.48、‐0.62] 3.2咳の重症度(平均改善) 2 154 平均差(ランダム、95%CI) ‐1.03 [‐1.59、‐0.47] 3.3面倒な咳(平均改善) 1 74 平均差(ランダム、95%CI) ‐0.93 [‐1.98、0.12] 3.4子供の睡眠(子供の睡眠スコアに対する咳の影響) 2 154 平均差(ランダム、95%CI) ‐1.04 [‐1.57、‐0.51] 3.5両親の睡眠(両親の睡眠スコアに対する咳の影響) 2 154 平均差(ランダム、95%CI) ‐0.88 [‐1.23、‐0.52] 3.6複合平均改善 1 74 平均差(ランダム、95%CI) ‐4.31 [‐6.77、‐1.85] 4ハチミツvsプラセボ(シランナツメヤシ抽出物) 1 平均差(ランダム、95%CI) 小計のみ 4.1咳の頻度(平均改善スコア) 1 300 平均差(ランダム、95%CI) ‐1.85 [‐3.36、‐0.33] 4.2咳の重症度(平均改善) 1 300 平均差(ランダム、95%CI) ‐1.83 [‐3.32、‐0.34] 4.3面倒な咳(平均改善)の軽減 1 300 平均差(ランダム、95%CI) ‐2.08 [‐3.97、‐0.19] 4.4子供の睡眠(子供の睡眠スコアに対する咳の影響) 1 300 平均差(ランダム、95%CI) ‐1.94 [‐3.93、0.06] 4.5両親の睡眠(両親の睡眠スコアに対する咳の影響) 1 300 平均差(ランダム、95%CI) ‐2.05 [‐4.24、0.13] ハチミツは、創傷治療や化粧品に使用されたりもする(Cochrane Database Syst Rev. 2013 Feb 28;(2):CD005083.)。しかし質の高い報告はなく、本当に有用なのかは不明。 どうして咳にハチミツが有効なのか? 咳は、気道内の異物を除去する生体反応だが、気道内に異物などで刺激が入ると咳嗽受容器が反応し、脳の咳中枢に伝達され、咳嗽反射が誘発される。 この経路のどこかにハチミツが作用するのだろうが、詳細は不明。 ある一説では、咳中枢に作用するという意見もあるよう。 また12か月未満の乳児には、ボツリヌス菌は摂取させない方がいいとされていることに注意。 また今回の結果は、あくまで子供を対象としたもので、大人の咳嗽にハチミツ単体が有効とする報告はまだない。 大人を対象とした、コーヒーにハチミツを入れた場合の報告はある(Prim Care Respir J. 2013 Sep;22(3):325-30.)。 男性97名(平均年齢40.1歳)を対象に、8時間ごとに1週間、コーヒー+ハチミツを飲む。 その前後の咳の調査で、プレドニゾロンやジャムに比べて効果があったとしている。