単麻痺;末梢性vs中枢性
本日は、単麻痺について。
単肢の麻痺では、つい末梢性と決めつけてしまいがち。
でも、ごくまれに中枢性の場合がありますので、一応その違いについて知っておく必要があります。
中枢性と末梢性の違いについて。
吉田拓弘、他.末梢性単麻痺と中枢性単麻痺.Clinical Neuroscience.2012;30(5):533-535.
単麻痺患者の場合、頻度的にも末梢性を疑うのは間違いではない。
しかし低頻度ながら、中枢性もある(脳梗塞での単麻痺発生は、2-13%とばらつきあり)。
ここで指す中枢性は基本的には「脳病変」によるもので、「脊髄病変」は含まない。
脊髄病変では、小病変であっても、複数の肢もしくは体幹に影響がでるため。
Maeder-Ingvarらは、21年間に4802例の脳卒中患者のうち、単麻痺を呈した195例(4.1%)を検討。
上肢に多い。→発生頻度的には脳卒中患者の2.3%程度ぐらいになるかなと思います。
その特徴として、
遠位筋>近位筋で、特に手指の麻痺が多い。
深部腱反射の亢進や病的反射は伴わないことが多い。
数日で、麻痺が消失あるいは軽減する例の報告が多い。
CTでの確認は困難。
下肢の麻痺は、
上記の報告では、下肢の麻痺は頻度が少ないが、
別の報告では1575例の脳卒中患者のうち4%で下肢の麻痺を呈したというものもある。
遠位筋<近位筋の報告が多い。
病的反射を認めた報告は少ない。
顔面部の麻痺
中枢性の顔面麻痺が単独で起こることはまれ。
比較的良好な経過をたどることが多い。
額のしわよせだけでの判別は難しいことがある。
末梢性との鑑別;
末梢性単麻痺では、感覚障害と筋委縮を伴うことが一般的(程度の差はあるが)。
しかし、多巣性運動ニューロパチーや運動ニューロン疾患の初期には、末梢性との鑑別が難しい。
まずは、
麻痺の部位を正確に把握。
単神経の支配領域よりも広範囲の場合は、末梢性よりも上位障害を考える。
感覚障害を伴わず、筋力低下・筋委縮があり、病的反射が出現している場合は運動ニューロン疾患も想定する。
私は中枢性単麻痺は経験がありませんので、実際にみると本当に分からないかもしれません。
疑うことを忘れないようにしたいです。