咳嗽受容体の分布
本日は、咳嗽のメカニズムについて
咳という字は、「ガイ」と呼びますが、「しわぶく」とも呼びます(訓読み)。
今では、ほとんど聞かないですが、昔は、咳をすることを「しわぶく」と言っていたようで、
源氏物語の中でも、
「しはぶきおぼほれて起きにたり(咳をしてむせて起きてしまった)」
という風に書かれていたりもします。
そして、嗽も咳をする様を表した文字のようです。
訓読みでは「すすぐ」と呼ぶようです。
さて、こうした咳嗽のメカニズムについては、いくつかの報告があります。
今回は、そのうちから少しだけ。
Chung KF, et al.Prevalence, pathogenesis, and causes of chronic cough. Lancet. 2008 Apr 19;371(9621):1364-74.
咳嗽のメカニズム;迷走神経が特に重要
下図の赤丸が迷走神経終末枝(Aδ神経;急速適応受容体「RARs」)
機械的な刺激に反応するAδ神経~異物や気道分泌物など
化学的な刺激に反応するC線維~サブスタンスPなどが関与し、RARsを刺激し咳になる
現在咳嗽受容体は、様々あると考えられており、
1.耳
2.鼻腔
3.副鼻腔
4.咽頭
5.喉頭
6.気管
7.気管支
8.末梢気道、肺胞、毛細管
9.胸膜
10.心臓
11.横隔膜
12.消化管
に分布しているとされている(石井義洋.卒後15年目の総合内科医の診断術)。
心疾患や逆流性食道炎などでも咳がでるのは、こうした刺激が、咳中枢へ伝達されるために起こる。
また7.気管支は、
慢性咳嗽の場合、「気管支平滑筋」と「気管支上皮」に分けて考えるといい。
気管支上皮~気管支炎やアトピー性咳嗽、喉のイガイガが強く気道分泌物が多い
気管支平滑筋~喘息や咳喘息、イガイガが比較的弱い
咳嗽発生の流れ;
咳嗽受容体⇒咳中枢⇒中枢パターン発生器⇒下喉頭神経や横隔神経,肋間神経を経て声帯,肋間筋,横隔膜の収縮⇒咳嗽
という流れに大まかになる。
咳嗽では、咳嗽受容体の分布から疾患分類を行うことも1つの方法と考えます。
例えば、
耳鼻咽喉
気道・肺・胸膜・横隔膜
心臓
消化器
の4つに大まかに分け、
咳が、夜間時のみだったり、起坐呼吸、胸痛を伴う、動悸、浮腫、体重増加などがあれば心臓を疑う。
喘鳴、喀痰、胸痛(吸気時)などは気道系
血便や血痰、などの出血傾向があれば消化器
といったように考えることが出来ると思います。
患者さんを前に起こり得る疾患すべてを想起することは難しいですが、
大まかな分類に分けて考えると、そこから他にどんな症状が起きるかは考えやすいと思います。