浮腫の身体所見の精度は?
本日は、浮腫に対する身体所見の精度についてです。
浮腫といっても、局所性浮腫と全身性浮腫に分かれ、局所性ではリンパ浮腫、静脈性、動脈性などありますが、今回の報告ではリンパ浮腫になります。
Jayaraj A, et al. The diagnostic unreliability of classic physical signs of lymphedema. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2019 Nov;7(6): 890-897.
リンパ浮腫の古典的な身体所見の診断上の信頼性。
対象は、初期評価で浮腫を認めた436人(636の浮腫)。
所見:
1.足背が浮腫んで腫れている
肥満患者で足が腫れるという訴えがあっても、圧痕が残らなければ、脂肪浮腫も考える。その場合、足背は腫れない。
2.スクエアトゥー~通常第1-2指が長いが、第3指もあり四角い形になる
https://walkwellstaywell.wordpress.com/tag/square-toes/より掲載
3.Kaposi-Stemmer sign(シュテンマーサイン)~皮膚をつかめるか?
第2趾の付け根をつまむ。
4.ノンピッティング~圧痕が残らない
低アルブミンが強いほど圧迫後回復が早い(fast edema)になる。
反対にリンパ浮腫や炎症性浮腫では、pitting edemaとなりやすい。
の4つの評価の精度を検討。
リンパ浮腫は、リンパシンチグラフィで確定とした。
その結果、
リンパシンチグラフィにて、41%が正常、59%が異常だった。
636のうち、15%がリンパ浮腫の臨床徴候で陽性だった。
4つの評価の精度は47%
感度17%
特異度88%
だった。
シュテンマーサインが最もリンパ浮腫の予測因子として良かった(OR:7.9)
という結果でした。
今回取り上げられた身体所見は、浮腫のときに行われることが多いものですが、感度がとても低い結果でした。
つまり、これらの所見が陰性であっても、否定することはできない。
ということになります。
また、シュテンマーサインは、比較的軽症では陰性になることが多い印象があります。
単体での判断は難しいかと思います。
浮腫に関する身体所見の新しい方法を提案している報告もありました。
使いどころは限られそうですが。
Ada F, et al. A new-proposal physical examination test for unilateral lower extremity edema. Heart Surg Forum. 2018 Sep 25;21(5): E392-E400.
腸骨静脈圧迫症候群(IVCS)は左下肢に多く出現する。
これを身体所見で鑑別したい。
左下肢の浮腫を呈した32例を対象。
立位時と30度に傾けたベッドで寝て足を挙げている状態を作り、下肢の周囲計測を行った。
その結果、
IVCSは18例(56%)に認められ、
この試験の感度は88%、特異度92%であった。
片側性の浮腫の場合で、行える環境にあれば便利な方法かもしれません。
浮腫は日常臨床で多く遭遇しますが、全身疾患の場合もあるので、病歴とあわせて観察することが大切です。