都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

字が書けなくなった70代女性。

先日来院された女性に問診表を渡して、記入をお願いしようとしたら、

「字が書けないのです」と言われ、詳しく聞くと、字を書こうとすると手に力が入らずうまく書けないと言われる。

字の時だけか?と尋ねると、包丁でみじん切りなどの細かい作業も似たようになるとのこと。

最初は「書痙」かな?と思いましたが、ジストニアとしては少し合わないようにも思います。

 

本日は、書痙患者に鍼治療が有効だった症例報告を読んでみました。

 

井上博紀、他. 動作分析と東洋医学的観点から考察した書痙患者2症例に対する鍼治療. 関西理学.2003;3:127-131. 

 

症例1

67歳、男性。元中学教諭。右利き。字を書こうとすると手が震える。

症例2

67歳、女性。元書道家。右利き。事故後より書痙。

 

鍼治療内容

 

頭鍼の上肢区(左)~上肢の筋活動バランスの調整目的

足陽明胃経の気舎(右)~腕神経叢へのアプローチが目的

足少陽胆経の風池(右)~東洋医学では風邪が原因で不随意運動が起こるため、その軽減

これらに週1回の治療。

 

その結果、

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鍼治療5回目には、書痙症状の改善傾向が観察できた。

書痙では、前腕書字関連筋群と書字固定筋である上肢近位筋の関与があり、それらの筋緊張の調整がうまくいかないと症状の緩和は難しいかもしれないとされる。

 

ジストニアは、原因不明の本態性ジストニア脳卒中など原因がある二次性ジストニアに分類されます。

今回の症例1は本態性ジストニア、症例2は事故がきっかけの二次性ジストニアと考えられます。

また、書痙や楽器演奏時にでるジストニア動作特異性ジストニアとも呼びます。これらは演奏家の場合に職業性ジストニアとも呼ぶこともあります。

抗精神病薬によるジストニアもあり、遅発性ジストニアもあります。

私はいぜん、遅発性ジストニア(斜頸)の症例を経験しており、合谷-外関の治療で軽快した症例を報告(学会発表)しています。

 

こうしたジストニアの特徴は、症状は常に一定。初期では夕方になると悪化する傾向。体の特定の部位を触ると症状が緩和する(治療部位になります)。

 

ジストニアに関して、関西理学の先生がたは多くの症例や治療方針を示してくれており、非常に参考になります。

患者さんは、異常が見つからず、精神性と判断されてしまい、不安を抱えているケースがあります。そんなときに鍼灸師は支えになれる存在だと思います。