都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

長引く腰痛では、これも考える

以前、このブログの中でも取り上げたのだが、

「腰仙移行椎の報告」

で腰椎5番(L5)と仙骨が異常関節を形成→ベルトロッティ症候群に関する報告だ。

 

Bertolotti症候群に対し横突起切除術を施行した2症例.

赤瀬広弥、他. 整形外科と災害外科. 2017; 66(2): 362-366.

 

ベルトロッティ症候群は、1917年にベルトロッティが提言したもの。

腰椎の横突起が肥大化により、仙骨と関節を形成し、腰痛を引き起こす。

治療の第一選択は保存的治療だが、難渋することも多く、外科的治療になることも多い。

 

症例1は18歳ごろから腰痛(10年罹患)を呈していた女性。

症例2は、62歳ごろから腰痛(2年ほど罹患)を呈していた女性。

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外科的切除で、腰痛は改善したという内容。

 

鍼灸師の中には、こんな稀な疾患は知らなくても大丈夫と思う先生もいるかもしれない。しかしある報告では、腰痛のある769例中4.6%に本疾患が認められ、30歳以下に限定すると11.4%と決して稀な疾患ではない。発生頻度でみると腰椎すべり症や分離症よりも高い頻度なのだ。

 

以前取り上げた腰仙移行椎の日本での発生頻度も4.5%程度であり、先ほどの報告と類似することから、日本の若年層の腰痛の原因の一端を担っている可能性がある。決して軽視してはいけない。

 

近年も、神経根症状と比較した報告(Spine.2019 Apr)や小児のベルトロッティ症候群の症例報告がだされている(Neurochirurgie. 2019 Jul 10.)

 

この疾患を所見で鍼灸師が見抜くことは難しい。

罹病期間が長く、若いうちから腰痛を呈している患者さんには、特に本疾患の可能性を考慮することを念頭に入れておくことが重要なのだと思う。