都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

末梢性と中枢性の顔面神経麻痺を鑑別するポイント

本日は、顔面神経麻痺についてです。

 

末梢性と中枢性がありますが、末梢性の代表的なのがベル麻痺、中枢性は脳卒中です。

その顔の麻痺の違いについて、

ベル麻痺のレビューから

GildenDH. Clinical practice. Bell's Palsy. N Engl J Med. 2004 Sep 23; 351(13): 1323-31.

 

例えば、健康であった50歳の男性の顔が右側に垂れ下がっていることに気づく。顔の非対称性は診て明らかではあり、口の右側には唾液が溜まっている。目を閉じようとすると右目はうまく閉じれない。歯を見せたり、右の頬を膨らませることもできない。

この患者は末梢性?中枢性?

 

定番は、額の皺寄せが可能かどうか?で判断するだろうと思います。

末梢性では麻痺側の額の皺が寄せられず、中枢性ならばしわ寄せ可能となります。

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上の図Aの男性は、額のしわ寄せが可能で、眼の大きさなど顔の上部は左右対称性です。これは中枢性を疑います。
ですが、図Bは額の右側みしわ寄せが出来ず、右目が左目よりも大きい(非対称性)、右上の顔の筋肉が麻痺していることから末梢性の可能性が高い。

図Cの男性は、顔面半側の痙攣があり、額のしわ寄せはできていませんが、これは末梢性と脳占拠性病変の両方の可能性が疑われます。一見すると左側の麻痺かな?と思いますが、全員右顔面麻痺です。

 

このように、額のしわ寄せが出来、顔の上部の麻痺が目立たなければ中枢性を疑い、目立てば末梢性を疑う。でも、麻痺よりも顔面の筋肉の痙攣が目立てば中枢性の可能性を否定しない!ことが大切です。

 

ですので、最初の「健康であった50歳の男性の顔が右側に垂れ下がっていることに気づく。顔の非対称性は診て明らかではあり、口の右側には唾液が溜まっている。目を閉じようとすると右目はうまく閉じれない。歯を見せたり、右の頬を膨らませることもできない。」は、末梢性の可能性が高いと判断できます。

 

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額のしわ寄せは、判断に迷い、分かりにくいことがあります。

そんなときは、「眼を閉じれるか?」「歯を見せて」の2つを用いるといいと思います。

「眼を閉じる」は顔の上の判断

「歯を見せて」は顔の下の判断

となります。

 

下の図Aのように右の麻痺があるようにみえますが、その後、冗談のような質問で笑顔にさせると、左右対称性に口角が上がることがあります。

こうした、随意的な歯を見せようとする動きでは脱力があるが、ふとした不随意的な動きでは脱力が目立たない場合、大脳皮質の障害を疑います

随意性障害>不随意性障害→大脳皮質の障害

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下図Aの女性に、歯を見せてというと、左右対称性に近い(わずかに右が強い)

でも、冗談のような質問をすると、Bのように左右非対称になる。

こうした場合は、脳深部病変を疑うようです。

随意性障害<不随意性障害→脳深部病変

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末梢性の場合は、

随意性障害=不随意性障害→末梢性顔面神経麻痺

となるようです。

 

このように、額のしわよせが分かりにくい場合、顔の上側と下側の左右対称性をみますが、随意性と不随意性の障害程度のバランスでも変わってきます。

 

末梢性と判断されたら、ベル麻痺なのかラムゼイハントなのか?それ以外なのか?となりますが、耳の症状があったら、ラムゼイハントではありません

ベル麻痺でも耳症状が認められることがあり、聴覚過敏があります。

これは、アブミ骨筋の麻痺に伴うもので、耳小骨の振動を減衰させ、影響を受ける側の音を異常に大きくしてしまうために起こります。ですが、難聴は伴いません

 

顔面神経と関わる神経の解剖模式図です。

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顔面神経麻痺をみたら、まずは「末梢性」と「中枢性」の鑑別。

鑑別には、額のしわ寄せ・閉眼・歯をみせるの3つだが、随意性と不随意性の障害に差がないかもみるとなお良し。といったところでしょうか。