都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

意外と多い腰痛原因の上殿皮神経障害

本日は、以前も取り上げた「上殿皮神経障害」に関する報告。
 
以前のブログも参照↓
 
Kuniya H, et al. Prospective study of superior cluneal nerve disorder as a potential cause of low back pain and leg symptoms. J Orthop Surg Res. 2014 Dec 31; 9: 139.
 

 

上殿皮神経障害(SCN)の有病率と臨床症状を調査。

 

対象は、2009年~2013年の間に、腰痛もしくは腰痛+下肢症状を有する834名。

内訳は、男性440人・女性394人、平均年齢64歳(16~94歳の範囲)。

 

SCNの診断基準は、

正中から70mm離れた背部腸骨稜線に圧痛があること

圧痛が症状を再現すること

の2点

 

その結果、

113名の14%が、診断基準を満たした。

内訳は、男性51人、女性62人、平均年齢68歳(17~93歳)。

SCNの有無で、患者背景を比較すると、女性(p<0.05)、年齢(p<0.05)が非SCNと比べてSCNに有意に多かった。

 

SCNグループと非SCNグループの比較

  SCN障害の疑い、 n  = 113 非SCN障害、 n  = 721 p 
女性/男性 62/51 332/389 <0.05
平均年齢(年、範囲) 68.2±14.6(17–93) 63.1±16.4(16–94) <0.05
平均疾患期間(月、範囲) 27.3±56.5(0.1〜444.0) 28.5±64.5(0.1〜542.7) NS
平均RDQ(範囲) 13.4±5.6(0〜22) 11.1±6.5(0–24) <0.05
平均VAS(範囲) 68.6±19.2(25–100) 70.8±25.2(0〜100) NS
胸腰椎または腰椎の骨折の存在 26(23%) 70(10%) <0.01

 

 

 臨床症状である腰痛や下肢痛の割合

 

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と、腰痛のみ52%、腰痛+下肢痛47%、下肢痛のみ1%であった。

 

ブロック注射を受けることになったある一例の痛みの分布

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痛みの悪化の要因

SCN障害が疑われる被験者の症状を悪化させる動きと姿勢( n  = 113)

運動と姿勢
歩く 39
着座位置からの立ち上がり 33
立位 25
前方屈曲 16
後方伸展 11
仰臥位 7
座位 6
任意の動き 4
患部に体重をかける 2
重いものを持ち上げる 2
ねじれ運動 2
ベッドから出る 2
瘡の位置 2
階段を降りて 1
腹臥位 1
症状を悪化させる活動はありません 5

 

834人中96人に計156箇所の脊椎圧迫骨折が認められた。

内訳は、男性38人、女性58人、平均年齢74.8±10.2歳(33~94歳)。

脊椎骨折のある患者とない患者の比較

  脊椎骨折患者( n  = 96) 脊椎骨折のない患者( n  = 738) p 
SCN障害 26(27%) 87(12%) <0.05
女性/男性 20/6 42/45 <0.05
平均年齢(年、範囲) 75.5±5.0(67〜84) 66.1±15.8(17–93) <0.05
平均疾患期間(月、範囲) 24.4±24.5(0.5–89.5) 28.5±64.7(0.1〜444.0) <0.05
平均RDQ(範囲) 15.9±5.1(6–22) 9.5±7.2(0〜22) <0.05
平均VAS(範囲) 72.7±17.2(40〜100) 67.3±19.7(25–100) NS

脊椎圧迫骨折のうち27%がSCN障害があった。

 

圧迫骨折のレベル 

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SCN障害の有無に関わらず、胸腰椎移行部や腰椎が多い。

 

SCNは、T11~L5の後根神経の皮枝であるため、これらの範囲の圧迫骨折は、SCNに影響を及ぼし、腰部下方(腸骨稜あたり)の痛みを引き起こすことになる。

 

腰痛や下肢痛を訴える方の約15%が、この上殿皮神経障害であった。

女性や高齢に多く、圧迫骨折も併存している可能性があるため、

腸骨稜あたりの痛みを訴える患者さんでは、圧迫骨折の確認(身体所見)と腸骨稜あたりの圧痛の有無を確認する方がよいと思われます。