意外と多い腰痛原因の上殿皮神経障害
上殿皮神経障害(SCN)の有病率と臨床症状を調査。
対象は、2009年~2013年の間に、腰痛もしくは腰痛+下肢症状を有する834名。
内訳は、男性440人・女性394人、平均年齢64歳(16~94歳の範囲)。
SCNの診断基準は、
正中から70mm離れた背部腸骨稜線に圧痛があること
圧痛が症状を再現すること
の2点
その結果、
113名の14%が、診断基準を満たした。
内訳は、男性51人、女性62人、平均年齢68歳(17~93歳)。
SCNの有無で、患者背景を比較すると、女性(p<0.05)、年齢(p<0.05)が非SCNと比べてSCNに有意に多かった。
SCN障害の疑い、 n = 113 | 非SCN障害、 n = 721 | p 値 | |
---|---|---|---|
女性/男性 | 62/51 | 332/389 | <0.05 |
平均年齢(年、範囲) | 68.2±14.6(17–93) | 63.1±16.4(16–94) | <0.05 |
平均疾患期間(月、範囲) | 27.3±56.5(0.1〜444.0) | 28.5±64.5(0.1〜542.7) | NS |
平均RDQ(範囲) | 13.4±5.6(0〜22) | 11.1±6.5(0–24) | <0.05 |
平均VAS(範囲) | 68.6±19.2(25–100) | 70.8±25.2(0〜100) | NS |
胸腰椎または腰椎の骨折の存在 | 26(23%) | 70(10%) | <0.01 |
臨床症状である腰痛や下肢痛の割合
と、腰痛のみ52%、腰痛+下肢痛47%、下肢痛のみ1%であった。
ブロック注射を受けることになったある一例の痛みの分布
痛みの悪化の要因
運動と姿勢 | 数 |
---|---|
歩く | 39 |
着座位置からの立ち上がり | 33 |
立位 | 25 |
前方屈曲 | 16 |
後方伸展 | 11 |
仰臥位 | 7 |
座位 | 6 |
任意の動き | 4 |
患部に体重をかける | 2 |
重いものを持ち上げる | 2 |
ねじれ運動 | 2 |
ベッドから出る | 2 |
瘡の位置 | 2 |
階段を降りて | 1 |
腹臥位 | 1 |
症状を悪化させる活動はありません | 5 |
834人中96人に計156箇所の脊椎圧迫骨折が認められた。
内訳は、男性38人、女性58人、平均年齢74.8±10.2歳(33~94歳)。
脊椎骨折患者( n = 96) | 脊椎骨折のない患者( n = 738) | p 値 | |
---|---|---|---|
SCN障害 | 26(27%) | 87(12%) | <0.05 |
女性/男性 | 20/6 | 42/45 | <0.05 |
平均年齢(年、範囲) | 75.5±5.0(67〜84) | 66.1±15.8(17–93) | <0.05 |
平均疾患期間(月、範囲) | 24.4±24.5(0.5–89.5) | 28.5±64.7(0.1〜444.0) | <0.05 |
平均RDQ(範囲) | 15.9±5.1(6–22) | 9.5±7.2(0〜22) | <0.05 |
平均VAS(範囲) | 72.7±17.2(40〜100) | 67.3±19.7(25–100) | NS |
脊椎圧迫骨折のうち27%がSCN障害があった。
圧迫骨折のレベル
SCN障害の有無に関わらず、胸腰椎移行部や腰椎が多い。
SCNは、T11~L5の後根神経の皮枝であるため、これらの範囲の圧迫骨折は、SCNに影響を及ぼし、腰部下方(腸骨稜あたり)の痛みを引き起こすことになる。
腰痛や下肢痛を訴える方の約15%が、この上殿皮神経障害であった。
女性や高齢に多く、圧迫骨折も併存している可能性があるため、
腸骨稜あたりの痛みを訴える患者さんでは、圧迫骨折の確認(身体所見)と腸骨稜あたりの圧痛の有無を確認する方がよいと思われます。