都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

上殿皮神経について

今回は、腰痛にも関わる上殿皮神経についての報告だ。

 

上殿皮神経障害のレビュー.

Spinal Surgery.2016;30(2):141-145.より

 

上殿皮神経(Superior cluneal nerve:SCN)の障害は、腰痛を主訴とする疾患の中でも頻度が高い。

 

SCNは、T11~L5の後根神経の皮枝が、腰背部を下外側へ走行し、腸骨稜近傍で胸腰筋膜を貫通して臀部へ至る感覚神経

その枝は、平均4-6本あり、位置により内側枝(正中3-4cmの腸骨稜近傍)、中間枝(正中から7-8cmの腸骨稜近傍)、外側枝に分けられる。

全日鍼灸誌.2010;60(5):811-818.より引用掲載

 

SCN障害は、1957年にStrogらによって報告され、腰痛のみではなく57%の患者は鼠径部痛や下肢痛を伴ったとしている。

 

本邦では、1961年 高山らが報告しており、難治性腰痛の中に腸骨稜付近の圧痛を認める症例はSCN障害である可能性が高いとしている。

 

1997年 Maigneらは、 坐骨神経痛がない腰痛患者1800例中29例(1.6%)がSCN障害であったとしている。

 

2014年Aotaらは、全腰痛の14%がSCN障害であると報告している。

Isuらは、パーキンソン病の腰痛や腰椎変性疾患、脊椎椎体骨折などにSCN障害が原因の1つであるとしている。

 

SCN障害は、片側性が多いが、両側性のこともあり、30例のSCN障害中6例(20%)が両側性との報告がある。別の報告では、2/3が両側性とするものもある。

 

男女比は、やや女性に多い傾向にある。

 

症状は、腰臀部痛を訴え、正中から3-4cm外側と、7-8cm外側に圧痛点が認められるのが特徴である。

腰の動きで症状は変動し、後屈や側屈、回旋、起立、座位、長時間の立位、歩行、寝返りで増悪することが報告されている。前屈は関係ないとするものと関係ありとするものがある。また間欠性跛行をもたらすこともあり、脊柱管狭窄症との鑑別が必要になる。

 

腰痛や下肢の痛み・しびれで来院した113例のSCN障害の症状は、腰痛のみ52%、腰下肢痛47%、下肢痛のみ1%であったとする報告があり、下肢痛も発生する。

 

原因は不明なことも多いが、診断基準としては、1神経の支配領域の痛み、2正中から7cm外側のSCNが圧迫される腸骨稜部のトリガーポイント、3神経ブロックによる75%以上の症状改善、とされている。

 

鍼灸師は、3の方法は行えないが、1と2が認められたらSCN障害と考えて施術を行ってもいいのではと思われる。