都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

胸椎の脊髄症はあまりみないけど

本日は、胸部脊髄症について。

胸椎椎間板ヘルニアなどにより、脊髄症となる疾患の総称。

 

 

Ando K, et al. Clinical features of thoracic myelopathy: A single-center study. J Am Acad Orthop Surg Glob Res Rev. 2019 Nov 4;3(11).

胸部脊髄症の臨床的特徴:単一施設研究

 

対象は、300人の胸部脊髄症患者

内訳;やや男性が多い傾向。

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胸部脊髄症の疾患は、

OLF:黄色靭帯骨化症;16%

OPLL:後縦靭帯骨化症;10%

IET:硬膜内髄外腫瘍;32.7%

IMSCT:髄内脊髄腫瘍;21.3%

VT:脊椎腫瘍;5.7%

SCH:脊髄ヘルニア;2.3%

VF:脊椎骨折;1.3%

TDH:胸椎椎間板ヘルニア;1.7%

脊髄腫瘍関連疾患で59.7%と約6割を占める

T1-4の上部胸椎よりも、T5-8の中部胸椎やT9-T12の下部胸椎の方が頻度は高い。

 

初期症状と手術前症状;

骨盤痛:6.3%vs7.3%

背部痛:16.3%vs19.3%

腰痛:21.9%vs27.2%

下肢のしびれ:52.8%vs80.2%

下肢痛:16.3%vs21.9%

歩行障害:25.9%vs64.1%

下肢麻痺:7%vs33.9%

膀胱直腸障害:3%vs9%

と初期は下肢のしびれや歩行障害などが訴えとして多い。進行すると下肢のしびれ、歩行障害、下肢麻痺などは増加する傾向。

 

疾患ごとにみると、

黄色靭帯骨化症は男性に多く、脊椎ヘルニアや脊椎骨折は女性に多い傾向。

発生部位は、黄色靭帯骨化症・硬膜内髄外腫瘍・脊椎骨折が特に下部胸椎(T9-T12)レベルの発症率が高い。後縦靭帯骨化症・脊髄ヘルニア・胸椎椎間板ヘルニアは中部(T5-8)胸椎で多い。

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臨床症状は、

骨盤痛:脊椎腫瘍が多く、頻度は高くなる傾向を示す。

背部痛:脊椎腫瘍と骨折が多いが、腫瘍も頻度増加傾向を示す。

腰痛:頻度は高いとは言えないが、どの疾患でも起こり得て、頻度増加傾向を示さない疾患もあることに注意

下肢のしびれ:比較的頻度が高い。進展様式はどんな感じになるか?上行性?片足⇒両足?

下肢痛:脊髄ヘルニア・骨折以外は頻度の増加傾向を示すが、脊椎ヘルニアは増加なし、骨折は訴えがない。

歩行障害:全疾患、経過中に頻度が増えています。

下肢麻痺:全疾患、頻度は増加傾向

膀胱直腸障害:SCH・VF・TDH以外は頻度が増加傾向。起こりそうだけどなぜ起きない?N数が少ないため?

 

頻度は増加傾向にある疾患では、症状の重症度も増加するのか?

 

発生部位別の臨床症状:

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疾患別でも、発生部位別でも膝蓋腱反射の方が亢進する割合は多い。

 

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歩行障害は、初期にはそこまで顕著ではないかもしれませんので、歩行のふらつきなどの訴えは見逃さないようにし、継足歩行などが検査としては有用と思われます。

 

また背部痛は上部胸椎で多いので、肩背部痛としての訴えになると思われます。

痛みが増悪傾向にあるか?下肢のしびれはないか?歩行障害はないか?を確認すると胸椎疾患の有無が少しは分かるのかもしれません。

なかなか普段、胸椎疾患を意識することは少ないので、忘れないようにしたいです。