都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

腹部大動脈瘤について

本日は、腹部大動脈瘤について。

 

先日、当院に全身のマッサージ希望の50代男性が来院。

既往歴は、20年来の糖尿病と関節リウマチ。

来院時の血圧は120/75mmHgだが、140になることも多いとのこと。

マッサージはリラクゼーション目的とのことで、体の不調は特にはないと言われる。

既往歴はあるが、それにしても特に不調はないとのことで、特にred flagは考えていませんでしたが、腹部をマッサージしようと触診したところ、3cm~3.5cm程度の血管拍動を感じてびっくり。

排尿障害や足の冷えなどを質問すると、軽度の冷えがあるとのこと。糖尿病によるもの?もしかして腹部大動脈瘤(AAA)の可能性もあり?

完全に油断していました。反省も込めて、本日はAAAに関する報告をいくつか。

  

腹部大動脈瘤の正常な大きさは、1.5~2.0cm。

日本人の正常な大きさは、1.93±0.26cmとされている

正常の1.5倍ないしは3cm以上で腹部大動脈瘤と定義される。

発生部位は、腎動脈分岐部以下が多い(約6割)。

 

発生頻度は?; 2000 May 22;160(10):1425-30.

50-79歳の退役軍人52745名のうち、1917名(3.6%)に3cm以上の、613名(1.2%)に4cm以上のAAAが確認。
喫煙歴は大きなリスクファクター(4cm以上のAAAの75%にあった)。
 

腹部大動脈瘤の大きさと破裂のリスク;

J Vasc Surg. 2003; 37: 1106-17.

腹部大動脈瘤の大きさ:破裂リスク(%/年)

<4cm:0%

4-5cm:0.5-5%

5-6cm:3-15%

6-7cm:10-20%

7-8cm:20-40%

>8cm:30-50%

 

AAAの形状;

 2019 Nov;270(5):852-858. より

嚢状と紡錘状に大別される。

嚢状をSaAAA、紡錘状はFuAAAと略す。

Saccular Abdominal Aortic Aneurysms: Patient Characteristics ...

形状別頻度;AAA患者7659名を対象に、

SaAAAが6.1%

FuAAA93.9%

急性のSaAAAは女性に多く、25.2%が直径5.5cm以下

急性FuAAAでは5.5cm以下は8.1%。

 

AAAの自然歴; 1992 Sep;31(9):1088-93.より

自然歴における累積生存率は、

1年:84%

3年:50%

5年:22%

胸部大動脈瘤よりも予後は不良だった。

部位による瘤径差で破裂頻度には差がなく、破裂時の死亡率は50%。

 

 2000 May 22;160(10):1425-30.では、

4cm以上のリスクファクターとして、

加齢(7歳ごと):OR1.7

AAAの家族歴:OR1.9

喫煙:OR5.1

コレステロール:OR1.4

動脈硬化性疾患:OR1.7

冠動脈疾患:OR1.5

はリスクが上がる。

深部静脈血栓症:OR0.7

糖尿病:OR0.5

女性:OR0.2

はリスクが下がる。

Multivariable Models of Associated Factors for Abdominal Aortic Aneurysm of at Least 4.0 cm in Diameter vs Normal Infrarenal Aortic Diameter*

 

症状は?;

多くは無症状だが、腰痛や下腹部痛

腸管圧迫による下痢・便秘・嘔気

尿管圧迫による頻尿や排尿困難、血尿、水腎症

大腿神経の圧迫による大腿前面から膝関節へのしびれ

下肢血管閉塞による間欠性跛行、下肢虚血症状、Blue-toe

 

AAAの触診の精度は?;

 1999 Jan 6;281(1):77-82.

The rational clinical examination. Does this patient have abdominal aortic aneurysm? .

 
3cm以上のAAAの触診では、
陽性尤度比12.0(7.4-19.5)
陰性尤度比0.72(0.38-0.67)
4cm以上のAAAの触診では、
陽性尤度比15.6(8.6-28.5)
陰性尤度比0.51(0.38-0.67)
だった。
しかし、腹部肥満の程度で感度は低下することに注意としている。
 
今回の経験を忘れず、とくに症状の訴えがなくとも、スクリーニングすることは忘れずに行うようにしていきたいと思います。