都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

若年の胸が痛い

先日、当院に肩こりの主訴で来られた20代女性。

話を聞いていると、「この1か月ほど、前胸部の剣状突起あたりが痛みのような違和感がずっとある。」と言われる(痛みの部位は、指でピンポイントで指せる)。

側臥位だと楽になるけど、仰臥位だと痛みが分かるとのこと。

CT検査や心電図などを行ったが異常なしと言われた。

 

こんな感じの患者さんが、鍼灸院に来ることがある。

本日は胸部痛に関しての報告をまとめてみました。

 

胸部痛で怖いのは、やはり5killerです。

急性冠症候群・大動脈解離・肺塞栓症・緊張性気胸・食道破裂の5つ

 

ですが、若年者の場合、こっらの頻度はぐっと下がる。

その場合、急性心膜炎・急性心筋炎・胸膜炎・気胸・縦郭気腫・消化性潰瘍・筋骨格系疼痛・心因性・precordial catch症候群などを考える。

 

その頻度をおおまかにまとめてみると、下のグラフのようになる。

 

f:id:ararepyon:20191017080534p:plain

(Am Fam Physician.2005;72:2012-21. 内科.2018;122:485-488.よりグラフに作成して掲載)

救急搬送以外は、比較的鍼灸院の来院層と近い。

胸痛の原因として多いのは、筋骨格系や心因性が約4割を占める。これらを胸壁痛とか胸痛症候群と呼ぶ。

 

では、胸壁痛を引き起こす疾患には、どんなのがあるのか?

 

f:id:ararepyon:20191017073835p:plain

(https://www.jhf.or.jp/check/opinion/10/post_86.htmlより掲載)

 

肋骨骨折~以前ブログ内でも取り上げたゴルフ骨折や咳による骨折がある。これらは、部位が異なるので、比較的分かりやすい。あとは転倒などによる外傷性。

肋軟骨炎やティーチェ症候群

  肋軟骨炎 ティーチェ症候群
頻度 よくある まれ
年齢 40歳以上 40歳未満
部位 90%で複数箇所 70%で1箇所
好発 第2-5肋軟骨接合部 第2-3肋軟骨接合部
腫脹 なし あり

(Am Fam Physician.2009 Sep 15;80(6):617-20.)

Sternalis症候群~胸骨体や胸骨筋に圧痛がでる稀な疾患。自然軽快する。

シュニッツラー症候群~成人発症の自己免疫疾患で非常にまれ。

悪性腫瘍

SAPHO症候群

再発性多発軟骨炎

流行性筋痛症

Precordial catch症候群~小児や若年に多い。

f:id:ararepyon:20191017073851p:plain

突然発症の数分以内に消失する鋭い痛み。吸気で悪化。

単純性筋肉痛

線維筋痛症

関節リウマチ

化膿性関節炎

肋間神経痛

肋骨すべり症候群~肋骨と胸骨をつなぐ靭帯がもろくなり、肋骨が動き肋下神経を圧迫して起こる。

剣状突起症候群~一般人口の2%で認められる(JAMA.2012;307:1746.)。Xiphodyniaによる痛みもある。

Xiphodynia~剣状突起が異常に前にでている状態で、軽い触診でも痛みがでる。

f:id:ararepyon:20191017083556p:plain

https://link.springer.com/article/10.1007/s00268-018-4668-9より掲載

 

疾患名で太文字は、特に頻度が多いと思われるものです。

 

胸痛も、考えることがいっぱいですが、まずは心疾患や呼吸器疾患の除外をして、筋骨格系を考えましょう。