都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

胸痛の良性疾患

 胸部や上腹部の痛みを訴えるけど、よく分からないケースは多い印象があります。

そこで、胸痛の良性疾患についてまとめてみます。

 

まずは、胸痛の原因別頻度;

アメリカの外来・ヨーロッパの外来・救急搬送の3パターンで原因別頻度
外来受診では筋骨格系の割合が多く、救急では重篤な心血管系疾患の割合が多い。
いずれも原因不明は11-16%ある。

Epidemiology of Chest Pain in Primary Care and Emergency Department Settings

DIAGNOSIS* PERCENTAGE OF PATIENTS PRESENTING WITH CHEST PAIN
PRIMARY CARE: UNITED STATES4 PRIMARY CARE: EUROPE3 EMERGENCY DEPARTMENT3

Musculoskeletal condition(筋骨格系)

36

29

7

Gastrointestinal disease(消化器疾患)

19

10

3

Serious cardiovascular disease†(重篤な心血管系疾患)

16

13

54

   Stable coronary artery disease(狭心症)

10

8

13

   Unstable coronary artery disease(不安定狭心症)

1.5

13

Psychosocial or psychiatric disease(心因性)

8

17

9

Pulmonary disease‡(肺疾患)

5

20

12

Nonspecific chest pain(原因不明)

16

11

15


 
 
次いで、日本での原因別頻度
日本公衆衛生雑誌.1990;37:569.
沖縄医学会雑誌.1993;30:301.
総合外来では、心血管系と筋骨格系がほぼ同程度の割合

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鍼灸院に来られる胸痛患者さんの特徴は、上記の報告の外来患者と類似すると考えると、
1.筋骨格系
2.心血管系
3.神経痛
の3つをまずは押さえておく必要があります。
 
2009 Sep 15;80(6):617-20.を参考に
肋骨骨折~外傷やゴルフなどによる疲労骨折、骨粗鬆症や骨転移による病的骨折
肋軟骨炎40歳以上の中年に多い。上部肋軟骨や胸肋関節に複数の圧痛を認めるが、腫脹はない。
ティーツェ症候群~40歳以下の無菌性肋軟骨炎。稀ではあるが、第2・第3肋軟骨や胸肋関節のいずれか1箇所に腫脹を伴う圧痛がある。
流行性筋痛症(ボルンホルム病)~ウイルス感染による急性の筋痛。深呼吸や咳で増悪するので胸膜炎と間違えやすいが、胸壁や腹壁に圧痛がある。
Precordial Catch~小児や若年に多い。誘因なく突然、数秒から数分かけて鋭い疼痛が起こる(左前胸部が多い)。吸気で増悪し、肋間筋の痙攣と考えられている。
肋間神経痛
肋骨すべり症候群(下部肋骨痛症候群;Slipping Rib Syndrome)~肋骨を胸骨につなぐ靭帯が弱くなり、肋骨がずれて肋下神経を圧迫する。肋骨炎に沿った上腹部痛を訴える。第8-10肋骨に起こりやすい。身体所見としてHooking maneuver
家庭医・医学教育研究者の省察的実践録: 胸痛をきたす良性疾患
耳寄りな心臓の話(第56話)『多感地帯の心臓前胸部』 |はあと文庫|心日本心臓財団刊行物|公益財団法人 日本心臓財団
 
この胸壁痛を起こす疾患の割合;
2007 Sep 12;8:51.
 より
195名の胸壁症候群患者の最大疼痛部位
a・b⇒胸骨・胸鎖関節・胸骨肋骨接合部:17.0%
C⇒剣状突起:3.1%
①⇒大胸筋:右3.1% 左20.5%
②⇒腋窩:右2.6% 左6.2%
③⇒肋骨肋軟骨接合部:右6.2% 左35.8%
④⇒肋骨下縁:右2.6% 左3.1%
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突然発症や増悪傾向、圧迫感、疼痛部位が不明瞭、冷や汗、持続時間が数分~30分などを認める場合は心血管系疾患の可能性が上がるので、注意。
鋭い痛みやピリピリした痛みを指で示せて、数秒の持続時間ならば筋骨格系の可能性が上がるので、上記の胸壁症候群などを参考にする。