変わった原因で起きた頭痛の症例報告
本日は、日本ならではのものが原因で起きた頭痛についての報告です。
あまりお目にかかることはないとは思いますが、何が原因で頭痛が起きたのか?
Takemoto K, et al. Reversible cerebral vasoconstriction syndrome associated with a traditional japanese training method under a waterfall named Takigyo: a case report. Acute Med Surg.2019 Jul 15;6(4):408-412.
症例:55歳、男性。既往歴:不安神経症。
患者は、高さ3mはある滝で滝行を初めて行った。入水し、肩の部分に滝の水が当たり始めてすぐに、彼は中等度の頭痛に襲われた。1分以内に最大強度の痛みになり、VAS6/10点となった。3分後に滝行が終わり、滝から離れても頭痛は継続。徐々に視力が低下していく事に気づいた。
そこで、病院に行き、MRI検査を受けた結果、急性脳卒中の疑いとなったが、精査目的で、別の病院を紹介された。患者には、脳卒中の危険因子である糖尿病や脂質異常症、高血圧などはなかったが、ヘビースモーカー(50-60本/日・35年)であり、アルコールは時々。
バイタルは問題なかったが、複視と左下四半円盲が認められた。感覚障害や筋力低下などはなし。MRIやMRAの結果から、両側前大脳動脈と後大脳動脈(PCA)に狭窄が認められた。
MRA画像:1日目は、三叉神経動脈の異常のみだったが、2日目には前大脳動脈と後大脳動脈の異常、10日目には、前・中・後大脳動脈の異常となった。
これらの経緯や結果から、Reversible cerebral vasoconstriction syndrome(RCVS):可逆性脳血管攣縮症候群が示唆された。
RCVSは雷鳴様頭痛の1つで、くも膜下出血や椎骨脳底動脈解離、可逆性後頭葉白質脳症(PRES)と同じ分類に入る。
くも膜下出血から想像できるように、Sudden onset(1分以内に最大の痛みのピークをむかえ、最悪の痛みとなる)。
その診断基準は、
この中で、鍼灸師が覚えておきたいのは、雷鳴様頭痛と1か月を超えて新たな症状が出現しない(臨床症状は改善傾向になることが多い)の2点だと思います。RCVSは、通常1か月以内に症状は改善する。死亡率は0-2%とされている(Lancet Neurol 2012; 11: 906–17)。
本症例のように、最初は脳卒中と思われるケースやCT・MRIで異常を認めないケースが30-70%あるとされ、臨床症状や経緯が重要となる。
本症例では、RCVSが最も疑われ、その原因として滝行が考えられた。
症例患者は、その後14日目に退院して、外来フォローとなり、症状も落ち着いているようです。
RCVSと診断された139例の後ろ向き研究では(Lancet Neurol 2012; 11: 906–17)、平均年利42.5歳、81%が女性であった。雷鳴様頭痛は85%の症例で認められ、43%で神経学的異常を認めた。
片頭痛の既往がある人は40%、9%が分娩後であった。
初診でのMRIなどは正常であった55%のうち、81%が最終的に脳卒中を発生した。
脳血管攣縮は、90%が2か月以内の回復をしたが2%は死亡、9%は後遺症が残った。
とされている。
鍼灸院には、神経学的異常が出現した人が未診断で来ることは稀だと思います。
そんなときは、雷鳴様頭痛の確認、片頭痛もちか?片頭痛と比べてどうか?
血管攣縮を起こす可能性のある薬剤(スマトリプタン、SSRI、覚せい剤など)を服用していないか?などを確認し、必要であれば病院を勧めるようにすればいいと思います。