症例問題シリーズ
本日は、久しぶりに症例問題シリーズです。
引用文献は。
Kiersz B. Photo Round. Pain in right shoulder. J Fam Pract. 2018 Jul;67(7):439;440;442.
症例
44歳、アフリカ系アメリカ人女性.
主訴:右肩の痛み
患者は、思春期の頃から多関節痛を訴えていた。その中でも、右肩の痛みが最も強く最悪であった。最大で8時間は続く朝の疲労、断続的な顔の発疹、口腔潰瘍、関節浮腫、光過敏症を伴っていた。
痛みが強いときは、イブプロフェンとアセトアミノフェンを服用。
しかし、痛みが強くて2014年以降は、仕事ができない状態である。
10代の頃には、若年性関節炎と診断された経緯がある。
患者の痛みは、肩・手・腰・足・膝にあり、疲労感がみてとれる。
肩関節は外転90度に減少で右肩の痛みが顕著。
抗核抗体検査は陰性。
両側の手足のX線検査では、関節びらんは認められなかった。
右肩のX線では、骨減少症と上腕骨頭のびらんが認められた。
診断
関節リウマチ
解説
X線で観察された関節びらんと朝の疲労感は関節リウマチを強く示唆する所見である。
関節リウマチは、原因不明の対称性末梢性多発性関節炎である。
世界中の人口の1%を占める。
軟骨と骨を侵食し、関節変形と破壊を引き起こす。
関節リウマチの特徴的な徴候は、関節びらんとリウマチ結節であるが、初期にはしばしば認められないことがある。
アメリカやヨーロッパの診断基準では、
1つの関節での滑膜炎の存在があり、大関節や小関節での痛みがあり、血清学的異常や炎症反応(CRPなど)などが認められ、6週間以上の持続する症状がいくつ満たすか?で決まります。しかし、これは早期の関節リウマチの場合で、慢性の場合は異なるとされる。
今回の症例における鑑別疾患
1.全身性リウマチ疾患~全身性エリテマトーデスの関節炎、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、混合性結合組織病といった膠原病がある。しかし、これらは関節リウマチとはことなる自己抗体を生成することが鑑別ポイントであること、もう1つは、赤沈が亢進していても、活動型の全身性エリテマトーデスではCRPは正常の場合がある。
2.ウイルス性多発性関節炎~風疹、パルボウイルスB194、アルファウイルス、B型肝炎によって起こる。症状は、3日から数週間続くが6週間を超えることは稀。例外で、アルファウイルスは3-6か月続く。これらの一般的な症状は、発熱・関節炎・発疹がある。ときに血清陰性の関節リウマチとよく似た症状で、診断基準さえ満たすことがある。
3.変形性関節症~小関節の変形性関節症の場合、関節リウマチと混同される場合がある。へバーデン結節では関節リウマチと起こる部位が異なるなどの差異を注意して観察する必要がある。また変形性関節症の腫脹と比べて関節リウマチは温かく波状でしなやかな腫脹となる。変形性関節症の硬直性は、活動性で数分間しか持続しないが、関節リウマチでは安静時に悪化し30分以上持続する。
今回は、症例問題を解いてみましたが、膠原病の類はおそらくほとんどの方が想起されるかと思います。問題は、膠原病の何か?だと思います。何度も勉強しても、これは難しいです。苦手な分野ですが、だからこそなおさら復習しないといけないと思いました。