Cervical anginaについて
先日、左肩・肩背部・腕としびれを訴える患者さんが来られ、話を聞いていると数日前に息が苦しくなる状態になったと言われます。発作は数分で治まったようです。
この方は、病院で検査され、頚椎症性神経根症と診断され、心疾患は否定されています。
こうした、狭心症発作を思わせる発作が、頚椎由来で起こる病態を「Cervical angina」と呼びますが、必ず心疾患の否定が必要となります。
今回は、cervical anginaに関する報告2編
清水正人、他. いわゆるCervical anginaの臨床的特徴. 整形外科と災害外科. 1991;40(1):149-151.
長久功、他. Cervical anginaを呈した不安定性頚椎症性脊髄症の1例. Jpn J Neurosurg (Tokyo). 2009; 18: 133-137.
Cervical anginaは、1927年にPhillipsが狭心症様発作前胸部痛として、報告したとされています。
発生機所については不明な点が多いため、臨床的特徴をまとめた報告。
Cervical angina8例(男性2例、女性6例、平均年齢50.6歳)
前胸部痛は、右側は今回はいなかった(今回の私が経験した方も左~正中でした)。でも他の報告では、右側も報告されているようです。
半数(50%)が、胸部痛に先行した頚部痛・肩痛を訴えた。
75%が夜間発作、安楽姿勢で63%が発生。
多くは5分以内で治まるが、1例は30分以上だった。
随伴症状:肩甲骨周囲の痛み(全例)、左腕のしびれ
頚椎伸展により前胸部痛が誘発された症例はなし。
心疾患は否定されるも、心臓神経症や心身症といった診断名が付いていることも少なくない。
その機序としては、
C7神経根や自律神経系の関連などが示唆されているようです。
発作が強い場合、意識消失するケースもあったようです。
まだ不明な点が多い本症で機序を理解しようとしても難しいので、
ここではCervical anginaは頚椎由来で発生することが多く、
前胸部にある筋肉は、頚椎C5~Th1(内側・外側胸筋神経支配)なので、肩甲骨周囲だけではなく、前胸部に影響がでることもある。
と理解しておけばいいと思います。