ベーカー嚢腫について
当院血管外科で診療したBaker Cyst(ベーカー嚢腫)の検討.
静脈学. 2018; 29(3): 399-403.
ベーカー嚢腫は、注意して観察しなければ見逃す可能性がある。
また、その有病率などについて論じた報告は少ない。
2009-2017年まで下肢腫脹を主訴に深部静脈血栓症が疑われた患者310例中6例(1.9%)、下肢静脈瘤患者2135例中13例(0.6%)にベーカー嚢腫が発見された。
概要は以下
女性の55~81歳に多く、なぜか左に多い傾向があるようだ(総腸骨静脈の関連か?)。
このうち、3症例を提示している。
75歳、男性。
右下肢腫脹で深部静脈血栓症疑いで受診。
偽性血栓性静脈炎と診断。右下肢の穿刺を行い黄褐色のゼリー状液体30ml吸引。再発後、再度吸引して、今のところ再発はなし
75歳、女性。
左下肢の腫脹で受診。既往歴:変形性膝関節症
D-dimerは軽度高値。左膝窩部に45㎜のベーカー嚢腫あり(造影CT)。
穿刺吸引して、再発なし。
膝疾患のうち、5~32%の頻度でベーカー嚢腫が発生するとする報告あり。
関節リウマチ、変形性膝関節症、半月板断裂などに伴うことが多い。
嚢腫の合併症には、下肢虚血、神経障害、コンパートメント症候群などがある。
保存的治療は効果なし。
下肢腫脹を主訴に受診した患者の2.8%・2.6%・1.2%・2.4%・3.1%との頻度であったとする報告がいくつかある。
鍼灸師が遭遇することは少ない印象であったが、膝疾患を取り扱うことや、浮腫に対してマッサージを行うこともあり、忘れず膝窩部の状態などを観察することが重要で、もし遭遇したり、疑いがあるならば病院受診を勧めることが重要となるだろう。