都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

ベーカー嚢腫について

当院血管外科で診療したBaker Cyst(ベーカー嚢腫)の検討.

静脈学. 2018; 29(3): 399-403.

 

ベーカー嚢腫は、注意して観察しなければ見逃す可能性がある。

また、その有病率などについて論じた報告は少ない。

 

2009-2017年まで下肢腫脹を主訴に深部静脈血栓症が疑われた患者310例中6例(1.9%)、下肢静脈瘤患者2135例中13例(0.6%)にベーカー嚢腫が発見された。

概要は以下

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女性の55~81歳に多く、なぜか左に多い傾向があるようだ(総腸骨静脈の関連か?)。

 

このうち、3症例を提示している。

75歳、男性。

右下肢腫脹で深部静脈血栓症疑いで受診。

偽性血栓性静脈炎と診断。右下肢の穿刺を行い黄褐色のゼリー状液体30ml吸引。再発後、再度吸引して、今のところ再発はなし

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75歳、女性。

左下肢の腫脹で受診。既往歴:変形性膝関節症

D-dimerは軽度高値。左膝窩部に45㎜のベーカー嚢腫あり(造影CT)。

穿刺吸引して、再発なし。

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膝疾患のうち、5~32%の頻度でベーカー嚢腫が発生するとする報告あり。

関節リウマチ、変形性膝関節症、半月板断裂などに伴うことが多い。

嚢腫の合併症には、下肢虚血、神経障害、コンパートメント症候群などがある。

保存的治療は効果なし。

 

下肢腫脹を主訴に受診した患者の2.8%・2.6%・1.2%・2.4%・3.1%との頻度であったとする報告がいくつかある。

 

鍼灸師が遭遇することは少ない印象であったが、膝疾患を取り扱うことや、浮腫に対してマッサージを行うこともあり、忘れず膝窩部の状態などを観察することが重要で、もし遭遇したり、疑いがあるならば病院受診を勧めることが重要となるだろう。