熱傷に対する鍼治療
本日は、熱傷に対する鍼治療の効果について。
私も、褥瘡や低温熱傷に対する鍼治療を行っていますが、それとは少し機序が異なる熱傷(火傷)です。
Loskotova A, et al. The use of acupuncture in first aid of burns-clinical report. Burns.2017 Dec;43(8):1782-1791.
火傷の第一治療に鍼治療を使用した臨床報告.
鍼治療(AUC)は、熱傷(BT)の応急処置の重要な要素を担う。
非常に強い痛みを伴い、軽度の熱傷であっても、外傷後ストレス障害が発生することもある。
チェコ共和国の外科病棟にて、1983-2015年にかけて火傷の治療で鍼治療を受けた1008名をまとめた。
熱傷の分類;
対象者;子供が多い。また成人では女性が多い。料理関係とかでの熱傷でしょうか?
熱傷と鍼治療;
過去の関連報告は思ったよりあるのですね。
鍼の部位;LI4;合谷、LU7;列缺、LI11;曲池
施術;
31歳、男性の右手第3指の熱傷に列缺に熱傷後24時間以内に開始し、4週後には治癒判定
34歳、男性。Ⅰa-Ⅱbの熱傷、顔や首、両腕の熱傷。曲池の鍼で6週後に治癒。
熱傷の原因や部位など;
表をグラフ化;
火傷が最も多く84.6%、次いで火災が11.4%
部位は胸部が最も多く、次いで上肢・下肢・顔首の順で多い。
24時間以内に施術を受けた方は、発赤や色素沈着、肥厚性瘢痕などが残らず治癒したが、24時間以降はいずれかが残った。
34歳男性は、18時間以内に鍼施術開始。後遺症無し。
26歳女性は、火傷の後に鍼治療が遅れ、後遺症が残った(発赤)
子供も似たような感じ。
鍼を早期から行うと治癒促進もだが、肥厚性瘢痕などを予防し、外傷後ストレス障害の予防にもつながると考えられる。
とされた。
熱傷や低温熱傷に鍼灸は有用な治療法だと思っています。
ですが、注意が必要なのは感染症です。
きちんと管理できる体制が整った状態での施術ならばいいのですが、リスク管理が出来ていない状態での施術は控える方がいいと思っています。
管理体制がない場合、鍼灸での適応となりうるのは、熱傷後の瘢痕性疼痛症候群だと思います。
それらに関する報告もいくつかありました。
Cuignet O, et al. The effects of electroacupuncture on analgesia and peripheral sensory threshoulds in patients with burn scar pain. Burns.2015 Sep;41(6):1298-305.
熱傷瘢痕疼痛患者における鎮痛作用および末梢感覚閾値に対する鍼通電療法の効果.
Fang S. The successful treatment of pain associated with scar tissue using acupuncture. J Acupunct Meridian Stud. 2014 Oct;7(5): 262-4.
鍼治療を用いた瘢痕組織に伴う痛みの治療の成功.
私は熱傷の瘢痕後疼痛症候群に対しては経験がありませんが、褥瘡後の瘢痕後疼痛症候群は数例経験があります。
難治性を示すことが多いので、即効性には乏しい印象ですが、徐々に改善傾向を示す有用な方法だと思っています。
今回の報告は、対照群が設定されていないため、治癒促進されたかどうかは判断できません。
私が褥瘡での鍼施術をする際は、局所でしたが、上肢の経穴での選穴は面白く、参考になります。
熱傷の施術はリスク管理をしたうえで施術に臨むことをお勧めします。