風邪と抗生物質
本日は風邪と抗生物質についての報告です。
一般的な風邪とは、ウイルス性上気道炎を指しますが、ウイルス性ではなく細菌性の場合もあります。
ウイルス性の場合、抗生物質を飲んでも効果はありません。そればかりか耐性菌を増殖させる危険性もあります。
抗生物質が必要なのは、細菌性の場合が原則です。
ですが、日本では(海外もですが)、ウイルス性の風邪にも抗生物質が今でも出されることがあるようです。
Kamata K,et al. Public knowledge and perception about antimicrobials and antimicrobial resistance in Japan: A national questionnaire survey in 2017. PLoS One.2018 Nov 5;13(11):e0207017.
日本における抗菌剤および抗菌剤耐性に関する知識と認識:2017年の全国アンケート
抗菌薬耐性(AMR)は、世界の脅威となりうる。
そのため抗菌薬は慎重に投与される必要がある。
本アンケートの参加者は医療専門家ではない20~69歳の日本人。
アンケート結果
約30%は、風邪をひいたときに、抗生物質をくれる医師を希望している。
約10%は、医師に抗生物質を要求している。
11.7%は、飲み切らなかった抗生物質を保管していた
23.6%は、処方された量ではなく、自己判断で投与量を調整していた。
約40%はテレビや新聞が情報源としている。
約80%は、抗生物質が風邪やインフルエンザに効果がないことを知らなかった。
という結果でした。
こうした効かない薬を飲むことは、副作用もさることながら薬剤耐性菌の危険も持つことから、今年、薬剤耐性(AMR)ワンヘルスプラットフォームが公開されました。
これは、
2019年10月7日より公開で、全国の都道府県別に薬物耐性データを集計したサイトで国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターが行っている事業のようです。
その中に意識調査の項目があり、抗生物質についての集計結果が出されていました。
一般国民を対象に、「抗生物質を内服することになった理由」
風邪が理由として多かった。
「抗生物質はウイルスを退治出来ると思うか?」
出来ると思っているのは各国一定数いることから、啓蒙活動が必要と思われます。
また出来ないと思っている人が他国と比べて少ないことも問題です。
また、これは余談ですが、日本人は分からないという回答が他国と比べても多い。外国の人の方が正解か間違っているかは別として、答えをはっきりさせる人が多いことが伺えます。
臨床医を対象に行った「感冒に対する抗菌薬の投与割合」
「感冒に対する抗菌薬の投与理由」
医師が処方する割合も約4割が抗生物質で、その理由として習慣的の人が約3%もいるのは驚きです。
私の住んでいる宮崎県は、全国と比べても抗菌薬の使用量が多いようです(風邪とは限りません)。
こうした情報が随時公開されていくようです。
ウイルス性の風邪やインフルエンザには抗生物質は効かない。
これを強烈なインパクトでアピールする必要があります。
風邪とインフルエンザの特徴をまとめた表です↓
(JAMA Intern Med.2018 Sep 1;178(9):1288.)
風邪は通常、7-10日続き、鼻水や鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、咳、うっ血、眼の腫れ、疲労感、軽度の発熱、頭痛などが起こる。合併症(耳感染症、副鼻腔感染症、肺炎)は稀。
風邪をひいた際は、治療しなくても自然に良くなるため、医師の診察は必要ない。
軽度の発熱や頭痛に対しては、市販薬(アセトアミノフェンやイブプロフェン)で対応。
多量の水分摂取は回復を早める。
持病で心疾患がある方は風邪薬を服用してもよいか問い合わせた方がいい。
10-14日で良くならない場合、医師に診てもらう。
重度の発熱、全身の痛み、発疹、胸痛、息切れ、喘鳴などが生じたらインフルエンザや肺炎の可能性があるので、その場合は医師に問い合わせる。
とされています(JAMA Intern Med.2018 Sep 1;178(9):1288.)。
(BMJ.2018 Oct 10;363:k3786.)
風邪の際にしてはいけない対応についてまとめられた絵です(成人以降)。
風邪症状が広範囲に及んでいる場合はウイルス性のことが大半です。
ですが限局した症状、例えば鼻水だけ、のどが痛いだけ、といった場合もウイルス性が多いですが、その場合は細菌性も考慮して病院に受診した方がいいと思います。ですが、できれば受診前に病院などに電話で問い合わせる方が病気の拡散を防ぐためにもいいと思います。