牛乳アレルギーと乳糖不耐症の違い
子供のころは、牛乳飲めたのに、大人になって牛乳を飲むとお腹を下すって人がいます。
また子供でも、牛乳を飲むとお腹を下す子もいます。
牛乳を飲んでお腹の調子が悪くなるのは、牛乳アレルギーと言われることがありますが、実際には違うことがあります。
よく間違われるのですが、似た症状を呈しますが、乳糖不耐症の場合があります。
以前は、症状が同じなのでよく同じものとして扱われていましたが、現在では異なるものとして扱われます。
Di Costanzo M, et al. Lactose intolerance: Common misunderstandings. Ann Nutr Metab. 2018;73 Supple 4: 30-37.
Micic D, et al. Clinical approach to lactose intolerance. JAMA.2019 Sep 26.
乳糖不耐症とは、乳糖(ラクトース)を消化する酵素(小腸の分泌)であるラクターゼが欠乏することで、下痢や腹痛などを起こすもの。
牛乳アレルギーは、食物アレルギーの1つで、牛乳などの乳製品に含まれるカゼインやβラクトグロブリンなどのタンパク質がアレルゲンとなり、アレルギー反応が起こり腹痛や下痢、じんましんなどが起こる。
このように、起こる症状は似ていても、原因が異なるため、対処方法も変わってきます。
fig.1は子供の食物が原因で起こる反応(食物有害反応)の図です。
このうち食物アレルギーとセリアック病は、免疫介在性反応を示しますが、それ以外は非免疫性です。
乳糖不耐症と牛乳アレルギーの違いを一覧表にしたもの
乳糖不耐症は5-6歳頃(乳幼児の頃はラクターゼが多いので、消化吸収できるが、離乳後は減少するため起こる)からですが、牛乳アレルギーは乳児期から始まります。
消化器症状はどちらも類似(便秘や嘔吐は少ない)していますが、随伴症状は異なります。
また、乳糖不耐症の消化器症状は摂取後30分から2時間後に起こる。牛乳アレルギーもおおよそ15分から30分以内には起こると思われるので、時間で判断するのは少し難しい。
乳糖不耐症では体重増加の遅れ(小児:下痢によるもの)、頭痛、めまい、記憶障害が起こる(20%程度の発生率)ことがありますが、牛乳アレルギーでは皮膚症状(蕁麻疹や血管浮腫)、呼吸器症状(鼻のかゆみ・鼻水・咳・胸の圧迫感・息切れ・喘鳴)、結膜炎、アナフィラキシーショックといったアレルギー症状を伴うことがあります。
牛乳アレルギーの有病率を調べた報告では、だいたい2%前後といったところ。
(Nutrients.2019 May 10;11(5).より)
一方、乳糖不耐症はアメリカの3000-5000万人があるとされている。
アジア人の90%は、小児期よりラクターゼの減少が起こるともされており、日本人も結構な数がいると予想できます。ほとんどの方が気づいていないだけで、実は大半が乳糖不耐症のようです。
しかし、北欧やヨーロッパの人の85%程度の人は、生涯にわたってラクターゼが減らないともされています。なので乳糖不耐症は少ないようです。
牛乳アレルギーは即時型アレルギーに分類されますので、基本的には少量でもアレルギー反応が起こりますが、乳糖不耐症の場合は牛乳250-375mlまでは症状が起こらないことが多いようです。ですので、その範囲であれば、乳糖不耐症の方でも飲んで大丈夫だと思います(個人差あり)。
ラクトースが含まれる食品
では、鍼灸は効果があるのか?
調べてみましたが、乳糖不耐症や牛乳アレルギーに対する鍼灸報告はないようです。
でも、食物アレルギーに関しては、補完代替医療の使用頻度が報告されており、
食物アレルギーのある成人315人を対象に補完代替医療を行っているかアンケートした結果(Allergy.2002 Aug;57(8):694-700.)、
ホメオパシー:35%
自己血注入:28.1%
鍼治療:16%
生体共鳴?:10.0%
を行っているよう。
しかし、その効果に関してはエビデンスが不足していることが指摘されています(Immnuol Allergy Clin North Am. 2012 Feb;32(1):135-50.)。
じんましんとかなら対応できると思いますが、アレルギー自体を改善できるかは検証が不十分です。
今後の進展に期待です。