都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

免疫力アップのエビデンス

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https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/how-to-boost-your-immune-system

 

How to boost your immune system

免疫力向上の方法:現時点のエビデンスはどこまである?

 

感染が成立するには、

1.感染源(微生物)の存在

2.感染経路;接触感染・空気感染・飛沫感染・血液媒介感染など

3.宿主

の3つがそろわないといけない。

反対にいえば、この3つのうち1つでも除去できれば感染しないということ。

 

仮に3項目がそろったからといって感染症状が100%出現とはならない。

なぜなら、免疫力があるから。

 

感染症の対策は、感染の3項目の対策と免疫力向上が必要となる。

今回は、免疫力を向上させると言われているもののエビデンスがどの程度あるのか?

について。

 

最初に重要なのは、免疫力を上げると一言でいっても、これを科学的な検証で裏付けるのは非常に難しいということで、現時点でエビデンスがないからといって、有効ではないということではない。

 

次に大切なのは、免疫に関わるピースの変化が、免疫力アップにつながるとは限らないということ。

例えば、好中球が増えたから免疫力アップになるとは限らない。

G-CSF製剤;顆粒球コロニー形成刺激因子製剤

という薬剤は好中球を増やして、機能を底上げする効果があり、特定の感染症に有効とされる。

しかし、感染症全般には効果がない。

薬剤の場合、免疫力を上げるよりも、下げる方が得意(ステロイド免疫抑制剤など)。

グランシリンジ75 | 協和キリン医療関係者向け情報サイト 協和キリンメディカルサイト

このように、特定の免疫細胞だけ、数を増やしたりしても、感染症には有効ではないことが多い。

またアスリートが、血液ドーピングと言われる血球の数を増やしてパフォーマンスを上げる方法では、将来の脳卒中リスクが高まるともされている。

これは、免疫は単一の働きではなく、システムとして機能するためにある。

これが難しくしている要因でもあり、巷にはびこる偽情報ともつながる。

 

 

今回は、加齢、食事、ストレス、寒さ、運動に関する免疫のエビデンスを整理

 

免疫と年齢;

加齢に伴い免疫力が低下するが、その理由までは不明(おそらく胸腺が萎縮し、T細胞が低下すると示唆されている)。

こうしたことから感染症への罹患率・死亡率も高齢の方が高い。

さらにワクチンの効果も年代で変わる。

インフルエンザワクチンでは、

2歳の健康な子供と65歳以上では、65歳以上のワクチン効果は低いとされている。

 

米国予防接種諮問委員会の報告では、

インフルエンザのワクチン株と流行株が一致している場合、

65歳以下の健康成人の発症予防効果:70-90%

自宅で生活している60歳以上の発症予防効果:約58%

とされている。

高齢になるほどワクチン接種による予防効果は低くなるが、だからといって受けなくても大丈夫ということではない。

 

食事;

発展途上国では、栄養失調の方が感染症に罹患しやすい(しかしなぜかは不明)ことから分かるように、栄養は大切。

先進国でも、微量元素栄養失調(亜鉛、セレン、鉄、銅、葉酸、ビタミンA、B6、C、Eなどの欠乏)が多く、そのため感染症に対する免疫が弱いことがある。

これまでの研究から、こうした微量元素の欠乏が免疫反応に変化を起こすことは動物実験で分かっている。しかし、免疫反応の変化がどのような健康に害をなすのか?はまだ分かっていない。また、ヒトにおいても同様の反応が起こるのか?は分かっていない。

 

単一のサプリメントを大量に摂取してもあまり効果はないかもしれない。それよりかはマルチサプリメントの方が可能性は高い。

 

ストレス;

心と体には密接な関係があり、ストレスからくる精神病やじんましん、胃腸障害、心臓病などがある。

ストレスと免疫の関係を調査することは非常に難しい。

ある人にとってストレスに感じることが、別の人には幸福に感じるかもしれないといった問題がある。こうしたことから、ストレスとの因果関係を証明することは難しい。

 

寒さ:

南極大陸では風邪をひかないと言われるように、寒さと免疫には関係がある。と考える人がいる。

その他、雨に濡れると風邪をひくともいわれる。

しかし、雨に濡れただけでは風邪はひかないし、寒いだけでは風邪はひかない。

最初に書いた感染の3要素がそろわないといけない。

寒いと屋内で生活することが多くなる⇒屋内で人が密集し、ひとを介した感染が発生しやすい⇒寒いと空気も乾燥し、ウイルスの水分も蒸発し軽くなり、拡散しやすい状態になり、風邪をひきやすくなる。といったようなこと。

こうした課題を何百と行い結果を出したカナダの研究者は、

中等度の寒冷暴露では、免疫には異常はない。としている。

 

運動;

運動は健康にとって有益なものである。

また運動前後にいくつかの免疫反応に変化があることも報告されているが、現時点ではこの反応の変化が意味するところが分かっていない。

 

このように、多くの項目に対して、分かっていないことが多いのが現代。

誇張された宣伝や広告は制限されるべきかもしれない。