機能性高体温症について
國松淳和. 機能性高体温症の臨床.
Jpn J Psychosom Med. 60:227-233, 2020.
発熱(Fever)と高体温(hyperthermia)は異なる。
病的イベント⇒サイトカイン刺激⇒中枢に入りたいが、血液脳関門で足止め⇒メディエーターで伝令を送る⇒脳の血管内皮PGE2を産生⇒視床下部に作用⇒体温の設定変更⇒体温上昇
発熱はこのプロセスを経て体温上昇となるが、高体温は病的イベントなし、もしくは不明で、視床下部で体温設定が変更され、体温上昇につながる。
つまり高体温は、不明熱の1つとなる。
不明熱とは、1961年に「38.3℃以上(口腔内温度)の発熱が何度か認められる状態が3週間を超えて続き、1週間の入院精査でも原因が不明なもの」とされた。
※3週間の意味は、ウイルス感染症は3週間もすれば大半は解熱するため、とのこと。
※不明熱の三大疾患:感染症・膠原病・悪性疾患;Arch Intern Med. 2003 Mar 10;163(5):545-51.
この定義に従うと、機能性高体温症は不明熱には属さない。当時は生死にかかわる原因不明の高体温のみを不明熱としていたが、
現在では、QOLの不明熱という観点から、機能性高体温症も不明熱に属するようになったそう。
機能性高体温症=習慣性高体温症
小児や若年女性に多く、明らかな器質的疾患を認めない37.2~38.1℃の高体温を呈するもの。例外的に38~40℃のケースもある。
成人例では、微熱のことが多い。
小児や思春期の子供では、熱はあるけど、原因不明なので、心因性発熱とされることがある。ストレスを感じることで高体温を呈することもあるが、心因性だから大丈夫とはならない。
Table 1 高体温症らしさを評価するためのポイント
・持続する,医学的な消耗感がないこと
・医療者が眼前で計測し確認した体温上昇であること
・医療者が患者の皮膚を触り,体熱感を非局在性に認めること
・炎症反応上昇に基づかない熱であること
・血液培養が陰性であること
・不明熱精査で実施されるような諸検査で正常が確認されていること
・解熱剤(アセトアミノフェン,NSAID,ステロイド)が奏効しにくいこと
鑑別疾患;
全身性エリテマトーデス(SLE)~「CRP陰性の熱はSLE病態を疑え」
シェーグレン症候群~眼や口の乾燥が主体だが、汗腺などにも及び、熱放散ができずに高体温となることがある。CRPも陰性となり、機能性高体温症とされる場合がある。
特発性後天性全身性無汗症~まれな疾患。発汗が後天的にできなくなる。
家族性地中海熱~,1~3 日間ほどで自然に終息する発熱とそれに随伴する漿膜炎とでなる発作を,長期間反復することで特徴づけられる疾患。違いは、熱があるときにCRPは陽性となる。
その他
治療;
小児や思春期の機能性高体温症にはSSRIが奏功する。
しかし成人例では効きが良くはない。
どの年代であっても、多面的アプローチは必要。
鍼灸がこの場合、どういう風に役に立つことが出来るか?
考えておきたいです。