都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

皮膚と便秘薬の関係(動物研究)

本日は、便秘薬によって、皮膚の肌水分量への影響を調べた動物研究の報告。

 便秘薬として、刺激性下剤に分類されるセンナ(センノシド)を使用。

 

 2017 Aug;29(4):414-421. doi: 10.5021/ad.2017.29.4.414. Epub 2017 Jun 21.

Influence of Repeated Senna Laxative Use on Skin Barrier Function in Mice.

 
抄録;
[背景]主要な興奮性下剤の1つであるセンナは、便秘の治療に広く使用されています。慢性センナの使用は、結腸黒色症および/または上皮過形成などの結腸障害に関連すると報告されています。しかし、腸以外の臓器への慢性センナ使用の影響に関する明白な情報はありません。[目的]センナ投与の繰り返しによる皮膚バリア機能への影響を明らかにする。[METHODS] 8週齢の雄ヘアレスマウスは21日間センナ(10 mg / kg /日)を投与。経表皮水分損失(TEWL)を評価し、タンパク質分析法を使用して血漿および皮膚のバイオマーカーを調査しました。[結果] 7日目の糞便水分量は有意に増加した(下痢)。ただし、21日目には、センナを繰り返し投与した後に大幅に減少しました(便秘)。センナ投与群では、TEWLは7日目と21日目のコントロールと比較して有意に高かった。血漿アセチルコリン濃度とNO2- / NO3-はそれぞれ7日目と21日目に増加した。皮膚では、トリプターゼ陽性のマスト細胞と一酸化窒素合成酵素(iNOS)陽性細胞がそれぞれ7日目と21日目に増加しました。 7日目と21日目のTEWLの増加は、それぞれアトロピンとN(G)-ニトロ-L-アルギニンメチルエステルの投与によって抑制されました。[結論]センナの反復投与によって引き起こされる下痢または便秘が皮膚バリア機能の障害を引き起こすことが示唆されました。この障害のある皮膚バリア機能は、コリン作動性シグナルまたはiNOSに由来する酸化ストレスを介したマスト細胞により発生した可能性があります。
 
 
マウスに対するセンナの反復投与の効果(A)体重、(B)糞便重量、および(C)糞便水分量。青い丸はコントロールグループです。赤い丸はセンノシドグループです。(D)対照群およびセンノシド群のH&E染色。*対照と比較してp <0.05。スケールバー= 100 µm。
 
A)アセチルコリン、(B)は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、(C)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、及び(D)NOの血漿濃度- / NO 青い丸がコントロールです。赤い丸はセンノシドグループです。*対照と比較してp <0.05。
 
(A)肥満細胞トリプターゼの免疫組織化学(矢印)および皮膚中の肥満細胞トリプターゼの数。(B)誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の免疫組織化学(矢印)および皮膚のiNOS陽性細胞の数。青い丸がコントロールです。赤い丸はセンノシドグループです。p <0.05、** p <0.01(対照と比較)。スケールバー= 100 µm。
 
 
21日間にわたるTEWLと皮膚の水分補給レベルの推移。(A〜C)青い丸はコントロールです。(A)赤い丸はセンノシドグループです。(B)緑の四角はセンノシド+アトロピン群です。(C)白三角はsennoside + L-NAMEグループです。*対照と比較してp <0.05。TEWL:経表皮水分喪失、L-NAME:N(G)-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル。
 
下剤であるセンナを使用することで、肌の乾燥が起こることが示唆される結果でした。
またそのメカニズムは、2パターンあることが示唆される結果で、
1.アセチルコリン⇒肥満細胞もしくはケラチノサイトや線維芽細胞のコリン作動性のシステムの変調をきたす⇒皮膚乾燥
2.NOによる酸化ストレス⇒肥満細胞もしくはケラチノサイトや線維芽細胞のコリン作動性のシステムの変調をきたす⇒皮膚乾燥
とのこと。
 
センナの過剰使用は皮膚乾燥につながることが示唆される。その機序として、アセチルコリンやNOによる影響が考えられるようです。
近年では、ようやく便秘治療の進展があり、使える薬も増えてきました。
センナは徐々に効き目が悪くなるため、依存用量的に増やす傾向がありましたので、選択肢が増えるのはいいことだと思います。
でも、鍼灸師としては便秘も鍼灸で。と知ってもらえればと思いますが。