突発性難聴について
アメリカの耳鼻咽喉科・頭頚部外科学会(AAO-HNSF)では、今年「突発性難聴の診療ガイドライン」が改訂されました(Otolaryngol Head Neck Surg.2019;161:S1-S45.)。まだその中身は読んではいないのですが、
本日は、突発性難聴についていくつかの報告をまとめてみました。
Michels TC, et al. Hearing loss in adults: Differential diagnosis and treatment. Am Fam Physician. 2019 Jul 15;100(2):98-108.
アメリカでは成人の3.000万人に難聴がある。
聴力異常には、伝音性(CHL)・感音性(SNHL)・両者の混在性がある。
加齢に伴う難聴は感音難聴で、いわゆる老人性難聴とされ、最も一般的なタイプ。
30-60%は、難聴にめまいを伴う。
検査は、ささやき声テスト、聴力検査、神経学的検査、耳垢、鼓膜などの異常の有無などを行い、例えば72時間以内に30dB以上の聴力低下は迅速な対応が求められるとされている。
全身性疾患が疑われない限り、CTやMRIなどの検査はルーティンでは必要ない。
治療には、耳垢の除去、聴覚リハビリテーションなどがあるが、補聴器や重度な難聴では人工内耳も検討すべき。
突発性難聴と鑑別が難しいものに、急性低音型感音難聴があり、低音域の難聴や耳鳴りが特徴で、診断基準でも一部重なりがある。しかし、臨床的には相違がある。
吉田忠雄、他.突発性難聴と急性低音障害型感音難聴の比較.Audiology Japan.2017;60(5): 355.
3316例の突発性難聴と931例の急性低音障害型感音難聴の発症年齢を比較。
男女比は、突発性難聴は1:0.91でほぼ同じ、急性低音障害型感音難聴は1:2.17と女性に多い。
年齢も突発性難聴は60代がピークなのに対し、急性低音障害型感音難聴は女性30代・男性40代がピーク。
こうした傾向は、他の報告でも見られる(Audiology Japan.2001;44(5): 431-2.)。
こうした報告のように、突発性難聴は比較的年齢が高い方が発生しやすい。
しかし、若年者でも発生はする。
そこで両者で治り方に違いはあるのかを検討した報告がある。
Huafeng Y, et al. Clinical characteristics and prognosis of elderly patients with idiopathic sudden sensorineural hearing loss. Acta Otolaryngol. 2019 Aug27;1-4.
突発性難聴を呈した高齢者55人と若年者55人の経過を観察。
その結果、
全体的な回復率は若年者が有意に高い。
高齢者では、両耳発生に比べ片耳の治癒率は高い。
また早期治療に臨んだ方が治癒率が高い。
という結果であった。
患者さんに治癒率を聞かれた場合の参考値となる。
では、鍼灸を併用すると治りは良くなるのか?
最近システマティックレビューがありました。
Chen S, et al. Acupuncture for the treatment of sudden sensorineural hearing loss: A systematic review and meta-analysis: Acupuncture for SSNHL. Complement Ther Med. 2019 Feb;42:381-388.
突発性感音難聴(SSNHL)のRCTを集積。最終的に20件が残った。
その結果、
手動鍼vs西洋医学では治癒率に有意差はなかったが、鍼通電療法vs西洋医学では治癒率に有意な差があった。
総有効率では、手動鍼・鍼通電は西洋医学と比べ有意な改善を示した。
特に重大な有害事象はなし。
バイアスリスクや、メタ解析している結果に少し違和感があるものの、難治性を示す患者さんに鍼通電療法を勧めることができるかもしれない。