都城鍼灸ジャーナル

宮崎県都城市で鍼灸師をしている岩元英輔(はりきゅうマッサージReLife)です。読んだ論文を記録するためのブログです。当院のホームページ https://www.relife2019.jp/index.html しんきゅうコンパス https://www.shinq-compass.jp/salon/detail/33749

BPPVかそうでないかの問診精度

本日は、良性発作性頭位めまい症(BPPV)の問診について。

 

これまでこのブログ内で何度も取り上げているめまい。

個人的な考え方ですが、

鍼灸師は未診断のめまいの場合、BPPVのみが対応で、それ以外は病院受診を最初は勧める。診断済みであれば、鍼灸併用で対応可と考えています。

 

この場合、最初にBPPVか?そうではないか?の鑑別が必要になります。

 

今回の報告は6つの問診事項で鑑別できるか?という報告です。

 

 2020 Mar 3;94(9):e942-e949. doi: 10.1212/WNL.0000000000008876. Epub 2019 Dec 30.

Questionnaire-based diagnosis of benign paroxysmal positional vertigo.

 
対象は、大学病院のめまい外来を受診した578名(男性216名、女性362名、平均年齢60.0±14.7歳)だった。
 
この対象者に6つの問診を行う。
問診1;自分やその周りが回っている感覚があった?
問診2;頭を動かしているときにめまいを感じることが多かったか?
問診3;めまいの持続時間は3分以内?
問診4;どの姿勢で最もめまいを感じるか?(横たわる・ベッドから起きる・臥位で寝返りをうつ)
問診5;どちらがめまいを強く感じる?(頭を右に向けたとき・左に向けたとき)
問診6;頭を振った後にめまいはどれくらい続く?(1分未満・1分以上)
 
 
問診1-3は、BPPV以外の可能性を除外するためのもので、1つでもNOがあればBPPV以外の可能性が高い。すべてYESの場合はBPPVの可能性が高いので、問診4に進む。
 
問診4-6は、BPPVの罹患側と三半規管のどこが原因か?を探るもの。
BPPVでは、後半規管型が最も多く、次いで水平半規管型(外側半規管型)が多いので、その鑑別として、問診4が使われる。
横たわる・ベッドから起きるときと答えたら、後半規管型(もしくは前半規管型)。
臥位で寝返り時と答えたら、水平半規管(外側半規管型)
 
問診5は、患側を決める問診
問診6は、サブタイプ(方向交代上向性(背地性)眼振・方向交代下向性(向地性)眼
振)を決める。1分未満ならば向地性、1分以上ならば背地性。これは主に外側半規管型で用いられる。
 
問診を行ったあと、問診結果を知らない別の医師が診断
その結果を照らし合わせると、
578名中、問診1-3で200名がすべてYESと回答し、別の医師にて160名はBPPVと診断された。
問診1-3のうち1つでもNOがあった378名中、別の医師から24名がBPPVと診断された。
これより問診1-3の診断精度は、
問診1;感度92.9%、特異度49.2%、LR+1.83、LR-0.14
問診1+2;感度89.1%、特異度74.4%、LR+3.48、LR-0.15
問診1-3;感度88.9%、特異度89.8%、LR+8.57、LR-0.15

f:id:ararepyon:20200503090914p:plain

であった。
 
次いで、問診4-6に勧めた200名は、
後半規管型70.7%、向地性水平半規管型13.6%、背地性水平半規管型15.8%だった。
 
それぞれのタイプ別に問診と医師の診察の一致率は、
右後半規管型:90.8%
左後半規管型:80.4%
右向地性水平半規管型:36.8%
左向地性水平半規管型:28%
右背地性水平半規管型:100%
左背地性水平半規管型:50%
となり、問診と医師の診察の一致率は71.2%だった。

f:id:ararepyon:20200503090451p:plain

AC=anterior canalBPPV=benign paroxysmal positional vertigoCRP=canalith repositioning procedureHC=horizontal canalPC=posterior canalSTARD=Standards for Reporting Diagnostic Accuracy StudiesVOG=video-oculography
Questionnaire-based diagnosis of benign paroxysmal positional ...
この結果から、未診断のめまい患者さんが来院された際に、
事前確率を30%とした場合(184÷578×100=約30%)、問診1-3がYESだった場合の事後確率は、約80%
1つでもNOがあった場合の事後確率は、約5%となります。

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めまい患者さんの初診では、まず使える問診だと思います。3つのうち1つでもNOがあれば、病院受診を勧めることになります。